一般に銀行の貸出金が預金を超過している状態をいうが,より正確には,貸出しと証券投資の合計が預金,債券発行高,自己資本の合計を恒常的に上回り,この超過分がコール・マネー,売渡手形,日銀借入金などによってまかなわれている状態をいう。日本の銀行はすでに明治の中葉1880年代ごろからオーバーローンの状態にあったが,第2次大戦後は1950-60年の経済復興・成長過程において,これが表裏の関係にある企業のオーバーボローイングとともに表面化し,日本の金融構造の特色を形成することになった。これは,銀行とくに都市銀行は企業の旺盛な資金需要に対して積極的に貸出しに応じ,しかもその間,増大する民間の現金需要がおもに日銀貸出金によって供給されたことによるものであった。オーバーローンが問題となったのは,銀行経営の健全性の観点からだけではなく,金融政策の弾力的な運営をも制約することになったからである。62年11月,日本銀行はオーバーローンの累積を抑制する目的で,債券売買の活用と都市銀行に対する貸出限度額適用制度を内容とする新金融調節方式を実施した。
執筆者:石田 定夫
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絶対的資金不足の高度成長時代に典型的にみられた現象であり、民間金融機関のうち、とりわけ都市銀行が資本金と預金残高の合計を超えて貸付け、その不足分を恒常的に日本銀行からの借入れに依存すること。企業の旺盛(おうせい)な資金需要によるオーバーボローイングと人為的低金利政策が強力に推進された結果生じた。相対取引型間接金融の圧倒的優位、オーバーボローイング、資金偏在と並んで、高度成長時代の日本金融構造を特徴づけた。企業のオーバーボローイングを背景に、経営の健全性が損なわれて安易な日本銀行借入れと貸付態度が大幅な景気変動やインフレーションの原因になったともいわれている。
1980年代以降、資金余剰の定着、大企業の銀行離れ、資金調達の多様化の進行、新金融商品の登場、金融市場の整備・創設、金融機関間の競争の激化と経営効率の向上の要請などにより徐々に薄れ、現在では解消されている。
[金子邦彦]
(2019-7-4)
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