日向洞窟(読み)ひなたどうくつ

国指定史跡ガイド 「日向洞窟」の解説

ひなたどうくつ【日向洞窟】


山形県東置賜(ひがしおきたま)郡高畠町竹森にある洞窟・岩陰遺跡米沢盆地の東北縁の北側山地に位置する。近辺には、尼子洞窟群、観音岩洞窟群など14ヵ所に洞窟遺跡群が集中している。遺跡は、凝灰岩塊の露頭が侵食風化作用によって生じた2つの自然洞窟と2つの岩陰からなる。縄文時代草創期から晩期以降の遺物が出土しており、とくに縄文時代草創期に属する土器石器は、新潟県小瀬ヶ沢洞窟、長崎県福井洞窟などと並んで旧石器文化から縄文文化への発展過程を解き明かすために重要な手がかりを提供している。1977年(昭和52)、国指定史跡となった。縄文時代最古の隆起線文系土器をはじめ、後続爪形文(つめがたもん)系土器、多縄文系土器の各様式のものが検出されており、日本海側の草創期土器の北限といわれている。ほかに、石鏃(せきぞく)、石槍、有舌尖頭器、断面三角形の鑚(きり)、局部磨製石斧、矢柄(やがら)研磨器が出土し、とくに断面三角形の鑚と矢柄研磨器は大陸から渡来した石器の一部ではないかという説もある。高畠町の洞窟遺跡群のうち、草創期の遺物を包含する洞窟は、ほかに火箱岩洞窟、一の沢洞窟、神立洞窟があるが、なかでも規模の大きな日向洞窟は草創期における中核地帯の一つだったと考えられている。JR山形新幹線ほか高畠駅から車で約30分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日向洞窟」の意味・わかりやすい解説

日向洞窟
ひなたどうくつ

山形県東置賜(ひがしおきたま)郡高畠(たかはた)町にある縄文・弥生(やよい)・古墳時代の洞窟住居跡。米沢(よねざわ)盆地の北東端、標高330メートルの凝灰岩が連立する丘陵の南斜面に立地する。1955~60年(昭和30~35)町教育委員会、山形大学、東京大学により、前後四次の発掘調査が実施された。洞窟は風化や侵食によってできたもので、三つの洞窟と一つの岩陰からなっている。洞窟内からは、多量の獣骨・鳥骨とともに人骨や土器・石器・骨角器が発見され、とくに最下層から出土した隆起線文(りゅうきせんもん)土器、押圧(おうあつ)縄文土器は、縄文土器の起源を探る草創期の設定を促し、第二次世界大戦後日本考古学史に新たな一ページを加えた学史的にも著名な遺跡として知られている。国指定史跡。

[佐々木洋治]

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