日長調節栽培(読み)にっちょうちょうせつさいばい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日長調節栽培」の意味・わかりやすい解説

日長調節栽培
にっちょうちょうせつさいばい

植物の栽培に際し、人工的に日照時間を調節することによって、開花を促進させたり、抑制したりする栽培法をいう。

 植物が開花するには花芽の形成が必要であるが、これには日長時間(昼の長さ)が関係する。日長がある時間以下(短日)になると花芽を形成して開花するものを短日性植物といい、日長がある時間以上(長日)になると花芽を形成して開花するものを長日性植物という。しかし、なかには熱帯性植物のようにどちらともつかない例外もあり、これを中間性植物とよんでいる。

 園芸では、これらの植物の日長反応の性質や特徴を利用した栽培が行われている。たとえば、短日になると花芽を形成する植物を、より早く開花させる手法として、長日期に人工的に夜の時間をつくる短日栽培や、短日で開花するものを逆に遅らせるために、人工光線で長日にして生育だけを促す長日栽培がある。

[堀 保男]

短日栽培

主として春から夏にかけて昼間の長さが14時間以上のときに、11時間以下の日長にすることで花芽分化が行われる植物に利用する開花促進栽培法である。鉢栽培ではポットマムポインセチアカランコエなどに利用されている。栽培物を黒布やシルバーポリシートで朝夕の自然光線を遮蔽(しゃへい)し、人工的に短日状態にする。一度花芽が形成されれば自然条件下でも開花する。なお、被覆することで内部高温になり、障害をおこすことがあるので注意する。遮光栽培、シェード・カルチャー、短日処理などともよばれる。

[堀 保男]

長日栽培

長日性植物と短日性植物の特徴を生かした利用法がある。(1)短日条件下で、長日性植物を人工的に長日条件下(日照14時間以上)に置くことで、開花促進(花芽分化)や成長促進を行う(ペチュニア)。(2)短日性植物を長日条件下に置き、花芽分化を抑制して成長だけを促す(切り花用キク)。

 一般に日照時間を長日に調節するには、人工光線(電灯ナトリウム灯)などの照明による長日処理が行われる。電照栽培、ライト・カルチャーなどともよばれる。

[堀 保男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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