植物の花芽形成には日長が重要な影響を及ぼしており,キク(秋ギク)やポインセチアなどは日長がある特定の時間よりも短くなった場合にだけ花芽を形成する。このような短日植物を日長の長い時期に開花させるために,毎日一定時間黒布や黒ビニルなどで植物体を被覆し,人為的に日長を短くして栽培することを遮光栽培またはシェード栽培という。おもにキク(秋ギク)で行われるが,ポインセチア,カランコエ,シャコバサボテンなどで行われることもある。
キクの開花期は品種によって異なり,普通の栽培で4月下旬に開花するものから翌年の2月上旬に開花するものまである。このうち9月以降に開花する秋ギク,寒ギクは代表的な短日植物で,長日期間である6~8月に開花させるためには,開花の45~50日前から日の出後と日没前の数時間を黒布などで被覆する短日処理(日長を11時間前後にする)をしなければならない。欧米では遮光栽培,電照栽培などを組み合わせて秋ギクの周年栽培を行っている。日本でも第2次大戦後,一時,長野県などで秋ギクの遮光栽培が行われたが,多くの労力がかかるため,現在では長日期間でも開花する7~9月咲きのキクの栽培に代わった。
執筆者:杉山 信男
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植物の開花促進を図るために、光線を遮断して日照時間を人工的に短縮する栽培をいう。植物が日長(昼の長さ)の長短に反応する性質(光周性)を利用したもので、普通秋から冬に花を咲かせる短日性植物を6~8月の長日期間に開花させる手法である。短日操作、シェードカルチャー、遮蔽(しゃへい)栽培ともいう。鉢ギク、ポインセチア、カランコエなどによく利用される。
遮光は普通、温室、プラスチックハウス(ビニルハウス)などの施設内で行われる。被覆材料は黒色ビニル(黒布)、シルバーポリエチレンシート、アスファルトペーパーなどで、小トンネル栽培では薦(こも)類が用いられる。遮光方法は植物の種類により一定ではないが、一般的には夕方早く(4~5時)に被覆し、朝遅く(7~8時)取り除く。植物が花芽を形成する期間被覆処理するが、早いもので20日、長期のものは60日くらいを要する。また、園芸植物で強い日照を嫌う種類を栽培するとき、日覆いをかけて減光することも遮光というが、短日処理による遮光とは区別する必要がある。
なお遮光栽培を逆利用して長日にし、成長の促進や開花調節する方法を電照栽培という。
[堀 保男]
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