日陰者ジュード(読み)ひかげものじゅーど(その他表記)Jude the Obscure

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日陰者ジュード」の意味・わかりやすい解説

日陰者ジュード
ひかげものじゅーど
Jude the Obscure

イギリスの作家T・ハーディ長編小説。1895年刊。学問にあこがれる貧しい石工ジュードは独学でクライストミンスター(オックスフォード)の大学入学を志すが拒否される。一方、肉欲の女アラベラに誘惑され、また反キリストの進歩的理想家の女教師シューと自由な共同生活を営むが惨めな失敗に終わる。シューは古い信仰と平凡な結婚生活に戻り、ジュードはクライストミンスターの下宿で孤独に息を引き取る。グロテスクな挿話を織り込んで近代人の悲惨を描き、発行当時は道徳的非難の的となったが、のちに20世紀文学を予見する作品として再評価されている。

[海老根宏]

『大沢衛訳『日蔭者ヂュード』全3冊(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日陰者ジュード」の意味・わかりやすい解説

日陰者ジュード
ひかげものジュード
Jude the Obscure

イギリスの詩人小説家 T.ハーディの小説。 1895年刊。不遇の境涯から身を起して学問を志す若者が,自制できない肉欲の誘惑や周囲の事情に翻弄されてついに挫折するにいたる,霊と肉の相克を描いた自然主義的小説。『ダーバービル家のテス』に続くこの作品に認められる反結婚的自由恋愛の思想について世間の非難が高まったため,ハーディは以後小説の執筆をやめ,詩作に転じた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の日陰者ジュードの言及

【ハーディ】より

…《緑の木陰》(1872),《狂乱の群れを離れて》(1874),《帰郷》(1878)などが初期の代表作である。《カスターブリッジの市長》(1886),《テス》(1891),《日陰者ジュード》(1896)など後期の代表作では,小説のプロットの組立てがますます精緻巧妙になり,建築家としての才能が構成に発揮されている。しかし,彼の小説の特徴は単にその構成の巧みさのみにあるのではない。…

※「日陰者ジュード」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android