正式名称は「映画の盗撮の防止に関する法律」であり、映画館における映画の盗撮行為を禁止するために、2007年(平成19)5月に制定された法律(平成19年法律第65号)。同年8月施行。
今日のデジタル技術の進歩によって高性能化したビデオカメラを使用して、映画館で映画の盗撮を行い、これによって作成された映画の海賊版がインターネット上で流通したり、露天販売されたりする事案が生じた。そこで、海賊版流通の大きな原因となっている映画館での映画の盗撮を防止することが必要とされ、本法が制定された。
著作権者の許諾を得ないで、著作権のある映画の録画・録音を行うことは、とくに著作権法で定められた例外の場合を除いて著作権侵害となる。しかし、著作権法には、私的使用を目的とした著作物の複製には著作権が及ばないとする例外規定(著作権法30条1項)があるため、映画館で映画の盗撮が行われた場合であっても行為者が私的使用目的の複製であることを主張したときは、著作権法ではこれをただちに著作権侵害と認めることが難しく、効果的な対応ができないことがあった。これに対し、本法は、映画の盗撮について、私的使用の目的でされるものであってもこれを違法とすることで、海賊版の流通防止を効果的に行おうとしている。
本法では、映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われる映画について、著作権者の許諾を得ずにその映像の録画または音声の録音を行うことを「映画の盗撮」と扱い、「映画の盗撮」が私的使用の目的による場合であっても、本法第4条第1項によって、私的使用を目的とした著作物の複製には著作権が及ばないとする規定(著作権法30条1項)を適用しないこととした。これにより、映画の盗撮(音声の録音を含む)は原則として著作権(複製権)の侵害となり、著作権法に基づいて、損害賠償請求、差止請求のほか、刑事罰の対象となり得る。
[田中 謙]
(宮本治雄 映画ライター / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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