時分かず(読み)トキワカズ

デジタル大辞泉 「時分かず」の意味・読み・例文・類語

ときか◦ず

季節区別がない。四季に関係ない。いつの時季でも。
「湯の原に鳴く葦田鶴あしたづがごとくいもに恋ふれや―◦ず鳴く」〈・九六一〉
「―◦ず降れる雪かと見るまでに垣根もたわに咲ける卯の花」〈拾遺・夏〉
[補説]文化庁が発表した平成20年度「国語に関する世論調査」では、「事件の後には、時を分かたず、厳重な警備が行われた」という例文を掲げ、「時を分かたず」について、「(ア)すぐに」「(イ)いつも」「(ア)と(イ)の両方」「(ア)(イ)とは全く別の意味」「分からないの」中から、その意味を選ばせている。解答率は(ア)66.8パーセント、(イ)14.1パーセント。国語課は(イ)を本来の意味とするが、この意味で使われている例はほとんどないのが実状で、例文の場合は(ア)(イ)どちらにも解釈可能である。
国語課が調査対象とした「時を分かたず」は多くの国語辞典には採録されていない。また、新聞紙上等にも使用例を見出すのが難しい。そこで本書では古語「時分かず」を見出し語として立て、語釈も古語用例に従った。なお、国語課担当官によると、「昼夜を分かたず」の「分かたず」に注目し、これに「時を」を付けた「時を分かたず」を調査対象とし、本来の意味を「いつも」とした由である。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「時分かず」の意味・読み・例文・類語

とき【時】 分(わ)かず

  1. 定まった時がない。いつと、きまっていない。季節の区別がない。いつでも。
    1. [初出の実例]「湯の原に鳴く蘆鶴は吾がごとく妹に恋ふれや時不定(ときわかず)鳴く」(出典万葉集(8C後)六・九六一)
    2. 「富士のたかねを見れば、時わかぬ雪なれども」(出典:東関紀行(1242頃)興津より車返)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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