富士(読み)ふじ

精選版 日本国語大辞典 「富士」の意味・読み・例文・類語

ふじ【富士】

[1]
[一] 「ふじさん(富士山)(一)(一)」の略。
常陸風土記(717‐724頃)筑波「神祖の尊、諸の神の処(みもと)に巡り行でまして、駿河の国福慈(フジ)の岳に到りまし」
[二] 静岡県東部の地名。富士山南側麓にあり、駿河湾に面する。江戸時代、東海道五十三次の原と蒲原の間の宿駅として発達した吉原を含む。現在は、日本の代表的な製紙工業都市の一つ。田子浦港がある。昭和二九年(一九五四)市制。
[2] 〘名〙
① (「えど(江戸)の富士」の略) 富士山の形に擬して築いた江戸市中の丘。多くは丘の上に浅間社をまつる。
※雑俳・柳多留‐五一(1811)「よし原へ不二の裾から息子ぬけ」
② 香木の名。分類は伽羅(きゃら)
※名香目録(1601)「富士 伽羅 ききあたらしうけだかく、ならびなきかほりあり」
③ 女陰の異称。
※雑俳・机の塵(1843)「ほんまかいナア・富士の裾野の月ぬらし」

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デジタル大辞泉 「富士」の意味・読み・例文・類語

ふじ【富士】

富士山」の略。「一富士二鷹たか茄子なすび
静岡県東部、富士山南麓にある市。駿河湾に面し、田子の浦港がある。パルプ・製紙などの工業が盛ん。平成20年(2008)に富士川町を編入。人口25.4万(2010)。
武田泰淳長編小説。昭和44年(1969)から昭和46年(1971)にかけて「」誌に連載。第二次大戦末期、富士山麓の精神科病院を舞台とする哲学的大作。
徳冨蘆花による自伝的小説。自身の結婚生活を描いた大作で、大正13年(1924)に書き始められ、昭和2年(1927)の著者の死に至るまで書き続けられた。全4巻。未完。
[補説]船舶名・品種名は別項。→ふじ(船舶名)ふじ(品種名)

ふじ[船舶名]

日本の第二代南極観測船。昭和40年(1965)、初代宗谷に続いて第七次から第二十四次の観測に従事。船尾部にヘリコプターの発着甲板と格納庫を備える。退役後は名古屋港で南極観測に関する博物館として利用されている。
[補説]品種名別項。→ふじ

ふじ[品種名]

リンゴの一品種。国光デリシャスの交配により作り出された。甘味が強く歯ごたえがよい。
[補説]船舶名別項。→ふじ

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改訂新版 世界大百科事典 「富士」の意味・わかりやすい解説

富士[市] (ふじ)

静岡県東部,富士川左岸を中心とする市。2008年11月旧富士市が富士川(ふじかわ)町を編入して成立した。人口25万4027(2010)。

富士川左岸にあり,富士市の中東部を占める旧市。1966年吉原市(1948市制),富士市(1954市制),鷹岡町が合体して富士市となる。人口23万6474(2005)。市域は富士山南斜面,愛鷹(あしたか)山西斜面,富士川扇状地と沼川沿いの浮島ヶ原低地などにわたる。明治以降,この地域の発展は和紙生産の伝統と豊富な水資源を利用した製紙工業の発達とともにある。1890年鷹岡に,1908年加島村に富士製紙工場がつくられ,翌09年東海道本線富士駅が開業すると富士地区は商工業の中心地となった。1988年東海道新幹線新富士駅が開業した。大正中期から昭和初期にかけて,近世に宿場町であった吉原を中心に地元資本の中小製紙工場が急増し,全国有数の紙の産地に成長した。市内に分布する製紙工場は120をこえ,製造品出荷額(1995)の3割強を紙・パルプが占め,1970年には田子ノ浦へどろ公害のように工場汚水や大気汚染などの公害問題も顕在化した。また第2次大戦中あるいは戦後進出の自動車,電機,化学などの大企業工場をはじめ,地元資本の製紙機械工場もあり,総合的な工業都市に変貌しつつある。農業は富士山や愛鷹山の斜面での野菜,茶づくりのほか,東部の柏原では菊栽培が盛んである。東名高速道路,国道1号線が通り,富士五湖,朝霧高原方面とは西富士有料道路,富士宮道路(95年無料開放)で結ばれている。JR東海道本線富士駅でJR身延(みのぶ)線,吉原駅で岳南鉄道が分岐する。
執筆者:

富士市西部の旧町。富士川下流右岸を占め,旧庵原(いはら)郡所属。人口1万6823(2005)。中心地の岩淵は江戸時代,甲斐の鰍沢(かじかざわ)との間の富士川舟運の中継地として栄えた。南部の低地には国道1号線,JR東海道本線が通じ,また富士川の豊富な水資源に恵まれ,製紙,合板,化学,食品加工などの工業が発達し,東駿河湾工業地域の一翼を担っている。近年,工業化とともに隣接する旧富士市,蒲原(かんばら)町(現,静岡市)からの人口流入が続き,ベッドタウン化も進んでいる。西部の傾斜地はかんきつ類,キーウィフルーツ,茶などが栽培される。南部山地の野田山やはたご池のある北松野台は,ハイキングコースとして親しまれている。
執筆者:

富士(旧町) (ふじ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「富士」の意味・わかりやすい解説

富士
ふじ

佐賀県北部、佐賀郡にあった旧町名(富士町(ちょう))。現在は佐賀市富士町地区で、市の北部を占める。脊振(せふり)山地に位置する。旧富士町は、1966年(昭和41)町制施行。2005年(平成17)諸富(もろどみ)、大和(やまと)の2町および三瀬(みつせ)村とともに佐賀市に合併。旧富士町は有明(ありあけ)海に注ぐ嘉瀬(かせ)川(川上(かわかみ)川)上流の高原状花崗(かこう)岩山地にあり、水系各地に山間小盆地が開け、峡谷が介在する。北端の分水界で福岡県と接する。地域の北東部に佐賀平野の水甕(みずがめ)、北山ダム(ほくざんだむ)があり、その下流に水力発電所が点在するが、2012年新たに嘉瀬川ダムが完成。国道323号で佐賀市街・唐津(からつ)方面に、また国道263号と三瀬トンネル(有料)の三瀬峠で福岡市に通じている。スギなどの造林地が広がり、特産レタスなどの野菜類の栽培が目だつ。古湯・熊の川温泉(ふるゆくまのかわおんせん)は国民保養温泉地。脊振北山、天山(てんざん)、川上金立(きんりゅう)の3県立自然公園域をもつ。下合瀬(しもおうせ)の大カツラは国指定天然記念物。上無津呂(かみむつろ)の茅葺(かやぶ)き吉村家住宅は国指定重要文化財。市川(いちかわ)の天衝舞浮立(てんつくみゃあぶりゅう)などが知られている。

[川崎 茂]

『『富士町誌』(1968・富士町)』『『富士町史』上・下巻(2000・富士町)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「富士」の意味・わかりやすい解説

富士
ふじ

佐賀県東部,佐賀市北西部の旧町域。川上川上流域,脊振山地にある。 1956年小関村,南山村,北山村の3村が合体,1966年町制。 2005年佐賀市,諸富町,大和町,三瀬村の4市町村と合体して佐賀市となった。林業,畑作が主産業で,高冷地野菜の栽培が行なわれる。水力開発も盛んで発電所が多い。北山ダム,古湯温泉熊ノ川温泉などの観光地は釣り客,浴客でにぎわう。北東部の下合瀬の大カツラは国の天然記念物。北部は脊振北山県立自然公園,南東部は川上金立県立自然公園,南西部は天山県立自然公園に属する。

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デジタル大辞泉プラス 「富士」の解説

富士〔戦艦〕

日本海軍の戦艦。富士型戦艦の1番艦。前弩級戦艦。イギリスで建造され、1897年8月に竣工、同年10月横須賀に到着。日本海軍初の近代戦艦。日露戦争で主力艦として活躍したのち、ワシントン軍縮条約により兵装を撤去。運送艦、練習艦などとして使用される。第二次世界大戦末期の横須賀空襲の際に被爆・炎上して着底。戦後、解体された。

富士〔フェリー〕

日本のフェリー。2005年7月竣工。静岡県の静岡港から土肥を結ぶ。

富士〔道の駅〕

静岡県富士市にある道の駅。国道1号に沿う。

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普及版 字通 「富士」の読み・字形・画数・意味

【富士】ふし

富人。

字通「富」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の富士の言及

【吉原】より

…駿河国(静岡県)富士郡の東海道の宿駅。鎌倉時代より見え,《春能深山路》弘安3年(1280)11月24日条に〈よしわらとて小家のあるに立ち入て〉とある。…

※「富士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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