暗部山(読み)クラブヤマ

デジタル大辞泉 「暗部山」の意味・読み・例文・類語

くらぶ‐やま【暗部山/闇部山】

鞍馬山古称。くらぶの山。[歌枕
「梅の花にほふ春べは―闇に越ゆれどしるくぞありける」〈古今・春上〉

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精選版 日本国語大辞典 「暗部山」の意味・読み・例文・類語

くらぶ‐やま【暗部山・闇部山】

  1. 京都市左京区にある鞍馬山の古名。くらぶの山。また、単に暗い山の意とも。歌枕。
    1. [初出の実例]「わがきつる方もしられず くらぶ山木々のこのはのちるとまがふに〈藤原敏行〉」(出典:古今和歌集(905‐914)秋下・二九五)

暗部山の補助注記

( 1 )その所在は、「能因歌枕」が伊賀とするが、「和歌初学抄」「八雲御抄」などは山城とするなど、一つの場所に特定できない。
( 2 )一般に鞍馬山の古名といわれるが、鞍馬山は、数多くの「くらぶやま」の一つであり、「暗し」のイメージの共通性によって言い換えられることが多かったとみるべきである。また、「くらぶ山」は雅語で日常的には「くらま山」であったか、とも考えられている。

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日本歴史地名大系 「暗部山」の解説

暗部山
くらぶやま

著名な歌枕だが所在は不明。近世の地誌では「都花月名所」が鞍馬と同じ、「京羽二重」が「くらま山のつゞき」、「山城名勝志」が「貴布禰山と同じ」とし、「大日本地名辞書」は「鞍馬は古名闇部くらぶ」とするが、いずれも根拠はない。

中世の歌学書「能因歌枕」は伊賀とする。

「日本書紀」天武紀にある「倉歴くらふ(現三重県阿山郡柘植町)によるものであろう。だが「五代集歌枕」「和歌初学抄」「八雲御抄」「八代集抄」は山城とする。また歌学書は「くらぶ山」と「くらま山」を別に立て、「後撰集」では各々二首をのせるので、別のものとして扱っていることがわかる。さらに「源順集」の歌合に、

<資料は省略されています>

とあり、ここでは山城、それも嵯峨野から遠からざる所ということになる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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