日本大百科全書(ニッポニカ) 「有害サイト」の意味・わかりやすい解説
有害サイト
ゆうがいさいと
暴力や性行為の描写、誹謗(ひぼう)中傷やいじめ、犯罪行為の請負・仲介などの映像・音声・文字情報をインターネット上で開示するサイト。一般には、青少年の健全な育成に好ましくないとされるサイトをさすが、広義には振込め詐欺や自殺誘引・銃砲等製造などの違法・有害情報のほか、漫画の海賊版サイトなど知的所有権を侵害するサイトなども含まれる。なお、スマートフォン利用者が有害なアプリケーション(アプリ)を介して通信し、有害サイトに接続して被害にあう事例が頻発している。2006年(平成18)から、警察庁の委託を受けた民間組織インターネット・ホットラインセンターが一般からの情報をもとに、違法・有害情報を警察へ通報し、サイト管理者やプロバイダー(接続事業者)には削除を依頼している。また、政府は2008年、青少年ネット規制法(正称「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」平成20年法律第79号)を制定し、18歳未満の未成年者を有害サイトから守る規制の整備を始めた。
同法は、青少年が有害サイトへ接続するのを制限するフィルタリング(選別)サービスを携帯電話会社、パソコンメーカー、プロバイダーなどに義務づけた。ただし実際の利用は保護者が選択できる。また、国とは別に第三者機関、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)が2008年から健全なサイトやアプリを審査・認定していたが、資金難を理由に2019年4月までで審査を終了した。警察庁によると、2022年(令和4)のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などコミュニティサイトに起因する子ども(18歳未満)の被害は1732件に上り、文部科学省によると2021年度のSNSなどを通じたいじめ件数は初めて2万件を超えた。なお、政府は2018年、プロバイダーなどが強制的に有害サイトの閲覧を遮断する「サイトブロッキング」の法制度化を検討したが、通信業界、著作権者、マスコミなどから、憲法が保障する「表現の自由」や「通信の秘密」を侵害しかねないとの反対論が出たため、実現していない。
[矢野 武 2023年5月18日]