改訂新版 世界大百科事典 「木生シダ」の意味・わかりやすい解説
木生シダ (もくせいしだ)
tree fern
茎が立ち上がり,葉が大型になったシダ類。シダ植物の茎は長く伸びる場合も地面をはって根茎になるのが普通であるが,いくつかの種では茎が直立して長く伸び,その周辺に不定根などが密にもつれ合ってつき,太い幹になって茎頂に展開する葉を支えているものがある。ヘゴ科のほとんどすべての種をはじめ,タカワラビ科,シシガシラ科などに,高い幹をつくる木生シダがあり,クワレシダなどの茎も高さが1m近くに伸びる。木生といっても,茎は肥大生長はしないので,材をつくることなく,いわゆる木本とはいえない。木生シダの幹は中心に細い茎が通っているだけで,分枝することもほとんどなく,台湾から報告されたエダウチヘゴや小笠原の南硫黄島のムニンエダウチヘゴなどは珍しい例である。ヘゴの幹を薄く板状にしたものをヘゴ板といい,着生植物の栽培に重宝される。これは不定根が密にからみ合ったものだから水はけがよく,着生植物の根づきをよくするものである。また,ヘゴ板をとるために幹が切られてしまうとその個体は枯死してしまい,そのことがヘゴ類が各地で絶滅する原因の一つとなっている。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報