ヘゴ(読み)へご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘゴ」の意味・わかりやすい解説

ヘゴ
へご / 杪欏
[学] Cyathea spinulosa Wall. ex Hook.

ヘゴ科の常緑性大形の木生シダ。湿度の高い林中を好む。茎は高さ4メートル、基部の径は50センチメートルに達し、まれに枝分れする。茎の上部には、長さ2メートルを超す葉が開出する。葉柄は葉身より短く、紫褐色で刺(とげ)が密生し、暗褐色の辺縁に刺のある鱗片(りんぺん)をつける。葉身は2回羽状に分裂、小羽片は羽状に深裂し、裏面に薄い包膜で覆われた胞子嚢(のう)群を多数つける。紀伊半島南部や八丈島を北限とし、四国、九州南部、屋久(やく)島より南でよくみかけられる。また、小笠原(おがさわら)諸島にも分布する。日本には本種のほかに6種の近縁種がある。沖縄諸島のヒカゲヘゴC. lepiferaは大形で高さ7メートルに達し、ヘゴと異なり包膜がなく、鱗片に刺がない。小笠原諸島に産するマルハチC. mertensianaはこの近縁種で、いずれも亜熱帯の指標植物であることから、大型温室には好んで栽植される。紀伊半島が北限のクサマルハチC. hancockiiは、ヘゴ科のなかでもっとも北に分布する小形種で、根茎は直立せず斜上する。ヘゴ科の茎は樹木の幹と異なり肥大成長をしないが、茎から出る無数の不定根に厚く覆われ、基部が太くなる。この不定根の層は湿度と空気とを適度に保持するため、着生のランシダ類の栽培に適し、ヘゴ板(いた)として市販される。東南アジア中南米では、茎や根塊を彫刻して土産(みやげ)品とする。また、茎はデンプンを多量に含むため、ニュージーランドをはじめ多くの地域で、かつては原住民がこれを食用とした。

[西田治文]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘゴ」の意味・わかりやすい解説

ヘゴ
Cyathea spinulosa

ヘゴ科の大型の木生シダ植物。八丈島,小笠原,紀伊半島以南,沖縄から中国大陸,ヒマラヤにかけて産する。茎は高さ 5mに達し,針金状の不定根で密におおわれ,基部は径 50cmに及ぶ。葉は大型で長さ 2mをこえ,茎の頂に群生する。葉柄は葉身より短く,紫褐色で著しいとげがある。葉身は倒卵状長楕円形で2回羽状分裂し,小羽片は羽状に深裂する。羽片は長さ 60cm,幅 20cmになる。胞子嚢群は中肋の両側に並列し,茶褐色で小球形,成熟すると破れて脱落する。本種の材を蛇木,ヘゴ板などと呼び,着生植物の栽培用に用いる。

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