訴訟代理人(弁護士)なしに当事者本人が自分で行う訴訟。民事訴訟での慣用語。地方裁判所クラス以上の裁判所では必ず訴訟代理人として弁護士を付けなければならないとするドイツ,オーストリアのような国もあるが(弁護士強制主義),日本は弁護士なしの訴訟,すなわち本人訴訟を許している。日本での制限は,本人訴訟をせず訴訟代理人を付けるというのであれば,その訴訟代理人は地方裁判所以上では弁護士でなければならない,というにとどまる(民事訴訟法54条)。
本人訴訟は弁護士報酬を支払わないのであるからそのぶん廉価となるが,法律的に十分な攻撃防御がなされる可能性が低く,裁判所が当事者に釈明を求めてそれを補うとしても(149条。釈明権),限度があり当事者の権利をそこなう危険がある。当事者に対し弁護士の付添いを裁判所が命ずることができるとする規定はあるが(155条),この規定も素人の不明確な陳述を排し訴訟を円滑明瞭に進行させるためのものであり,当事者の保護を直接の目的とするものではない。本人訴訟を減少させることは,十分な数の弁護士が全国にあまねく存在するわけでないことからむずかしく,日本の司法制度の大きな問題点の一つとなっている。
執筆者:高橋 宏志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(土井真一 京都大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ところで,最終的には訴えを提起できるのであるが,家事事件の一部や国税に関する不服等にあっては,それぞれ家事調停(家事審判法18条),異議申立て・審査請求(国税通則法115条)を経た後でなければ訴えを提起できないという制約を受けることがある。なお,訴えは弁護士の手を通す必要はなく,私人自身で提起し維持することが可能である(本人訴訟)。
[訴えの方式]
訴えの提起は訴状を裁判所に提出することによってなされる。…
※「本人訴訟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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