李善蘭(読み)りぜんらん(英語表記)Li Shan-lan

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「李善蘭」の意味・わかりやすい解説

李善蘭
りぜんらん
Li Shan-lan

[生]嘉慶6(1801)
[没]光緒8(1882).北京
中国の数学者。海寧 (浙江省) の人。字は壬叔,号は秋じん。道光 25 (1845) 年,陸費の家に雇われ,同 26年に『四元玉鑑』を解説した『四元解』 (3巻) を完成し,翌年には『対数探源』 (2巻) を書いて対数法を論じた。咸豊2 (52) 年上海へ行き,8年間ロンドン宣教師会のもとで西洋科学書の漢訳事業に参加した。イギリス人宣教師 A.ワイリーと協力して訳出した数学・科学書には,『続幾何原本』 (9巻) のほかに,J.ハーシェルの"Outlines of Astronomy"の訳書『談天』,ド・モルガンの"Elements of Algebra"の訳書『代数学』および E.ルーミスの"Analytical.Geometry and Calculus"の訳書『代微積拾級』がある (いずれも 1859年に出版された) 。 J.エドキンズと協力して訳出したものに,W.フューウェル (1794~1866) の原著に基づく『重学』『円錐曲線』がある (58年に出版された) 。 A.ウィリアムソン,エドキンズとの共訳書に『植物学』 (59) が,また,自著の『方円闡微』『弧矢啓秘』も『続芸海珠塵』に収められて出版された (59) 。次いで『白芙堂算学叢書』の編纂で著名な徐有任 (1800~60) のいる蘇州へ行ったが,そこが太平天国の手に落ち,徐が殺される (60) と,上海へ戻り曾国藩庇護を受け,同治6 (67) 年に未刊の7種を含む 13種の数学の著作『則古昔斎算学』 (24巻) を出版した。同治7 (68) 年,北京の同文館算学総教習に任ぜられた。

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改訂新版 世界大百科事典 「李善蘭」の意味・わかりやすい解説

李善蘭 (りぜんらん)
Lǐ Shàn lán
生没年:1811-82

中国,清末を代表する数学者。浙江省に生まれ若くして数学を好んだ。1852年(咸豊2)上海に赴き,イギリス人宣教師A.ワイリー(偉列亜力)とともに,ユークリッドの《ストイケイア》を訳し,《幾何原本》後編9巻を出した。そのほかワイリーと《代数学》《代微積拾級》を訳し,また同じくイギリス人宣教師J.エドキンズ(艾約瑟)とともに《重学》を訳し,ヨーロッパ数学を紹介した。中国の伝統数学にも詳しく,著書13種24巻は同治6年(1867)の自序を付し,《則古昔斎算学》の名で公刊された。晩年は北京同文館の算学教習になった。
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世界大百科事典(旧版)内の李善蘭の言及

【幾何原本】より

…明末にイエズス会士マテオ・リッチ(漢名,利瑪竇)が来朝し,その指導により徐光啓が1606年(万暦34)にその前半6巻を漢訳した。後半の9巻は,清末の1856年(咸豊6)にイギリス人宣教師ワイリーAlexander Wylie(漢名,偉烈亜力)が李善蘭の協力を得て訳出した。従来の中国数学になかった論証的幾何学を中国に紹介するのがリッチのそもそもの意図であったが,この訳書のまえがきでは,中国数学に欠けていた,科学的思考にとって重要な論証の方法や演繹法について,リッチは一言も語ろうとはしていない。…

※「李善蘭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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