精選版 日本国語大辞典 「清涼飲料」の意味・読み・例文・類語
せいりょう‐いんりょうセイリャウインレウ【清涼飲料】
- 〘 名詞 〙 =せいりょういんりょうすい(清涼飲料水)
- [初出の実例]「本法に於て清涼飲料と称するは炭酸瓦斯を含有する飲料を謂ふ」(出典:清涼飲料税法(大正一五年)(1926)一条)
アルコールを含まない嗜好(しこう)飲料および水の総称。法律的には食品衛生法で清涼飲料水として規定され、アルコール分1%未満のすべての飲料(乳、乳製品を除く)で、容器に入ったものをいう。ミネラルウォーター、炭酸飲料、果実飲料、スポーツ飲料、トマトジュースや野菜飲料、栄養ドリンクなどの保健飲料、コーヒーや紅茶飲料、豆乳、ウーロン茶などの茶系飲料などがある。また、水で溶かして飲む粉末清涼飲料、薄めて飲む希釈用清涼飲料もある。一般には乳酸菌飲料などの乳性飲料も含み、喫茶店などで供するソフトドリンクも清涼飲料の一種である。
ヨーロッパにおいて17世紀ごろ、天然鉱泉の飲用からおこったもので、ミネラルウォーター類として発展した。日本では、江戸時代に長崎に入ったオランダ水(すい)や、江戸末期、海外から入り、ラムネとして発展した炭酸飲料、天然水としては平野水(ひらのすい)などが最初である。
[河野友美・山口米子]
法律による清涼飲料水の規格は、基本的には食品衛生法(1959)で細かく規定され、さらに各清涼飲料については、それの属する飲料のJAS(ジャス)(日本農林規格)規定によって規格化されている。食品衛生法の基準では、(1)混濁していないこと。ただし、果汁などのように原材料に起因するものは除かれる。(2)沈殿物がないこと。ただし、(1)と同様、原材料からのものは除外される。(3)ヒ素、鉛、およびカドミウムが検出されないこと。また、スズでは150ppmを超えないものであること。(4)大腸菌群の検出反応が陰性であることが規定されている。JASでは、1970年(昭和45)に果実飲料、74年に炭酸飲料が規格化されている。
[河野友美・山口米子]
(1)飲料水 ミネラルウォーターをはじめ、自然水などを容器に詰めたもの。もともとはミネラルウォーターから出たものであるが、水道水の味の低下や、家庭での嗜好飲料の飲用増加などから、各種の飲料水が市販されるようになった。水質は、食品衛生法により成分規格や製造基準が定められている。おいしい水、天然水、自然水などともよばれている。
(2)炭酸飲料 プレーンソーダ(炭酸水)、各種の炭酸飲料、すなわち、ラムネ、サイダー、コーラ飲料、果汁入り炭酸飲料、無果汁炭酸飲料、ビタミンCなどの入った栄養ドリンクなどがある。いずれも、炭酸ガスが圧入されている。そのため、爽快(そうかい)な感じを伴う。
(3)果実飲料 果汁を主材料にした果実飲料には濃縮果汁、果実ジュース(オレンジジュース、リンゴジュースなど)、果実ミックスジュース、果粒入り果実ジュース、果実・野菜ミックスジュース(果汁分が50%以上)、果汁入り飲料がある。清涼飲料としては、果汁含有率10%以上で100%未満の果汁入り飲料が嗜好性飲料の性格が強い。原料の果実は非常に多種なものが使用されている。原料の果実の風味があり、また酸味を伴うので非常に清涼感がある。
(4)スポーツ飲料 1980年代から多く出回り始めた清涼飲料。食塩やカリウム塩、ブドウ糖など、血液成分に準じた成分を含有し、消化器からの吸収を効率よく考えたもので、アイソトニック飲料ともいう。スポーツのときなど、汗を多くかくような夏などによく飲まれる。
(5)保健飲料 炭酸飲料が主体で、天然カフェインやビタミンC、糖類などを配し、疲れたときに飲むと爽快になるということで嗜好する人が多い。食物繊維、カルシウム、アミノ酸などの補給を目的にしたものもあり、いわゆるドリンク剤と似ているが、ドリンク剤は薬事法で規定されているのに対し、保健飲料は清涼飲料に属する。
(6)茶系飲料 中国茶、紅茶、緑茶、麦茶、ブレンド茶などの浸出液を缶やペットボトルに入れたもの。1980年代のウーロン茶ブーム以来、無糖や茶の機能性で人気を博している。
[河野友美・山口米子]
清涼飲料は、名前のとおり清涼であることが第一の目的で、栄養的には糖分のあるものについてはエネルギーがあり、また、果汁含量の多いものや、豆乳、野菜飲料では栄養価が高い。ビタミン類を添加したものはそのビタミンについての補給に役だつ。糖分の入っているものでは糖分のとりすぎにつながることがあり、注意を要する。
[河野友美・山口米子]
清涼感を出すために、冷やして用いることがたいせつである。自動販売機やコンビニエンス・ストアの普及で、多量の清涼飲料が飲用されるようになった。しかし、容器の廃棄やリサイクルなど、大きな社会問題の原因ともなっている。飲料水にあっては、開封後常温に放置すると細菌の侵入とともにその繁殖がおこるおそれがあるので、冷蔵庫で保存したうえ、なるべく早く飲用することが必要である。
[河野友美・山口米子]
『河野昭三著『ビジネスの生成――清涼飲料の日本化』増補改訂版(2004・文真堂)』
清涼爽快な香味をもつ無酒精飲料(アルコール分が全容量の1/100以下)の総称。1900年の内務省令による〈清涼飲料水営業規則〉で,〈販売の用に供するラムネ,リモナーデ(果実水,ハッカ水,および桂皮水の類を含む),ソーダ水,およびその他の炭酸含有飲料水並びに果実汁……を言う〉と規定され,以後この語が普及するようになった。ほぼ同義の語にソフトドリンクがあり,国際的にはこの語が用いられている。現在の日本での市販品を大別すると,炭酸飲料,果実飲料,乳性飲料になる。炭酸飲料は炭酸ガスを含む発泡性飲料で,清涼飲料の主流をなし,サイダー,ラムネ,コーラ飲料,炭酸水(ソーダ水)などがこれに含まれる。果実飲料は果汁を主原料として香味を付与したものである(ジュース)。代表的なものは日本農林規格でいう果汁入り清涼飲料やフルーツシロップなどである。乳性飲料は乳または乳製品を原料とし,甘味料,色素,香料,酸,炭酸ガスおよび乳酸菌などを混和して作るもので,クリームソーダのほか,カルピス,ヤクルト(後者二つはともに商標)などもこれに含まれる。
冷たい水と一片の果実でもあれば,昔からどこででも清涼爽快な飲料は得られたわけで,その意味での清涼飲料の起源は人類とともに古いといえるかもしれない。しかし,近代的なそれは18世紀の化学者プリストリーによる炭酸ガスの発見,天然炭酸水の研究(1772)に始まると考えられよう。その後イギリスのハイラムコッドのラムネ瓶の発明(1843),アメリカのウィリアム・ペインターによる王冠の発明(1892)が契機となり,一方,製瓶工業,機械工業の発達に支えられ,清涼飲料工業は今日に見られるような隆盛を迎えるようになった。最近の清涼飲料に用いられる容器はガラス瓶のほか,缶,プラスチック容器(ペットボトル),紙容器などが多くなった。なお日本の清涼飲料水の規格基準によれば,成分規格として清涼飲料水には混濁,沈殿物がないこと(原材料および着色,着香の目的で使用される添加物に起因するものは除く),ヒ素,鉛,カドミウムを検出してはならず,スズは150ppmを越えてはならないとしている。このほか製造基準,容器包装についての基準などが定められている。
執筆者:菅原 龍幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…飲料はアルコール飲料と非アルコール飲料に大きく分類され,これらの製造業を飲料工業という。アルコール飲料すなわち酒類は清酒,ビール,ウィスキー,ブドウ酒などがおもなもので,非アルコール飲料には炭酸飲料,果実飲料,濃厚乳酸飲料などの清涼飲料のほか,コーヒー,紅茶,緑茶などが含まれ,その裾野は広い。
[アルコール飲料]
日本の酒税法では,アルコール分1度以上の飲料を酒類と定め,清酒,合成清酒,焼酎(しようちゆう),みりん,ビール,果実酒類,ウィスキー類,スピリッツ類,リキュール類,雑酒の10種類に分けている。…
※「清涼飲料」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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