翻訳|juice
果実や野菜のしぼり汁,およびそれを加工した飲料。日本では1894年ごろ和歌山県でミカンの搾汁を〈蜜柑水(みかんすい)〉と称して売り出したのが企業生産のはじめとされ,その後も散発的にこの種の果汁飲料が製造発売されたが,製品に欠点があり,広く普及するには至らなかった。1938年,アメリカでフランク・バヤリーが真空缶を用いる瞬間殺菌法を開発し,それまで行われていた加熱殺菌による変色やビタミンCの破壊などを防止しうるようになって,ジュースの工業生産は本格化した。その後,このバヤリーの特許をゼネラル・フーズが買収,日本では第2次大戦後の51年,朝日麦酒が〈バヤリースオレンジ〉を発売した。この商品は爆発的な人気を博し,他社もこれに追随して同種の瓶詰製品を発売,続いて水で希釈,あるいは溶解して飲用する濃厚ジュース(コンクジュース)や粉末ジュースも登場してジュースブームを現出した。60年代後半になって俗に〈噓(うそ)つきジュース〉といわれる不当表示が問題化した。合成香料,人工着色料,乳化剤といったもののみを原料とし,天然の果汁をほとんど含まぬようなものがあったためで,これを契機として果実飲料の表示についての公正競争規約がつくられ,ジュースと呼称できるのは天然果汁のみということになった。ここでいう天然果汁は濃縮したもの,またそれをもとの状態に還元したものも含まれる。現在JAS(日本農林規格)では一般にジュース類と呼ぶものを以下のように分類する。すなわち,果汁の含有量50%以上のものを〈果汁飲料〉,10~50%のものを〈果汁入り清涼飲料〉,果汁に乳や乳製品などを加えたものを〈混合果実飲料〉,果実ピューレ(果実を破砕して裏ごししたもの),あるいはそれに果汁を加えたものを〈果肉飲料〉,果実を細切りしたものを果汁に加えたものを〈果粒入り果実飲料〉と呼ぶ。なお,これらのジュース類は60年代以降瓶詰から缶詰,さらに紙箱詰と包装形態が多様になっているが,自動販売機の普及に比例して,いわゆる〈缶ジュース〉の空缶処理が社会問題にもなっている。
執筆者:菅原 龍幸+鈴木 晋一
オーストリアの地質学者。スエスとも読まれる。商人の子としてロンドンに生まれ,幼時家族とともにウィーンに帰る。英才教育をうけ,若くしてギムナジウムに入る。1848年17歳のとき革命運動に参加する。次いでプラハ大学で地質学・古生物学を学ぶ。ウィーンに戻り,52年に王宮博物館の助手,57年ウィーン大学の地質学員外教授,次いで同大学正教授(1857-1901)となった。67年ウィーン学士会員,69年ニーダーエスタライヒ州の州議会議員,73年には下院の国会議員となる。94年イギリスのローヤル・ソサエティの外国人会員に選ばれ,コプリー・メダルCopley medalを受賞。博物館勤務時代には腕足類,頭足類など古生物を研究,古生物学,層序学の研究からしだいに山脈の形成に注目するようになり,ウィーン大学に転じてから《アルプスの形成》(1875)や《地球の相貌》(1885-1909)などを著す。前者では地球収縮説をもとに,アルプスの形成過程を論じた。後者は大陸,海洋,山脈の形成と変遷を論じたものでゴンドワナ大陸やテチス海の名や地殻構成に関するシアルsial,シマsimaの分類など多くの術語を提唱した。彼は地質時代の全地球的な海の拡大・縮小を明らかにし,その原因を地殻の上昇・下降と考えた。後世の地球科学の分野に与えたその影響は大きい。
執筆者:町田 貞
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オーストリアの地質学者。ロンドンに生まれる。1857~1901年ウィーン大学教授、1898~1911年オーストリア科学アカデミー会長を務めた。アルプス山脈の形成についての論文と、著書『地球の相貌(そうぼう)』Antlitz der Erde(1883~1888)とによって世界の地質学界に非常に大きい影響を与えた。アルプス山脈については弧状の非対称的な形態を認め、側方からの押しによって生じたとし、その地殻変動の時期は、中生代から第三紀鮮新世までの非常に長い期間のものであったとした。『地球の相貌』は最初の世界全体の地質誌で、膨大な文献の渉猟と深い思索のもとに書かれている。褶曲(しゅうきょく)山地、楯状地(たてじょうち)、ゴンドワナ大陸、テチス海、現在の大洋など、古今の大陸大洋の世界における分布と地質時代的変遷を論じ、現在の地震、火山、第四紀の海水面変化に至るまで言及し、これらの統一総合化を初めて行った。その個々の説については支持を受けなくなった点も多いが、世界の地質を空間的、時間的に初めて総合化したことの地質学的、思想史的意義は非常に大きい。
[木村敏雄]
果汁あるいは野菜汁をいう。JAS(ジャス)(日本農林規格)では、果汁あるいは野菜汁100%以上のもののみがジュースとよぶことができ、商品名にもこれを記載することができるが、希釈したものにはいっさいジュースの名称は使用できない。しかし、一般には果汁や野菜汁の入った飲み物全体をジュースとよんでいる。
[河野友美・山口米子]
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…この分離された水が処女水である。チェコスロバキアの有名な温泉カルロビ・バリ(旧名カールスバート)温泉の起源について,オーストリアの地質学者E.ジュースは処女水説を主張した(1902)。この地域の降水量に対してカルロビ・バリ温泉の湧出量が著しく多いこと,温泉に含まれる炭酸物質や塩化ナトリウムなどの起源は地下深所のマグマに求めるべきであるというのが理由である。…
※「ジュース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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