宇野浩二(こうじ)の短編小説。1933年(昭和8)1月『改造』に発表、翌年3月、白水社刊行の同名の小説集に収録。宇野の友人である洋画家鍋井克之(なべいかつゆき)から伝え聞いた大阪出身の洋画家小出楢重(こいでならしげ)の挿話を素材としたもので、古泉圭造(こいずみけいぞう)(小出)の内に潜む芸術家の鬼気迫るばかりのデーモンを鋭く描出した作品。画家の晩年、肉体が衰えるとともに、逆に画業が異様な冴(さ)えをみせるという、芸術の不思議な魔力が巧みにとらえられている。1927年の精神疾患以来沈黙していた宇野の再起を示す作品で、小林秀雄らに激賞され、宇野後期の重厚な作風の出発点となった記念碑的な作品。題名は、古泉の遺作の題名によっている。
[森本 穫]
『『日本文学全集30 宇野浩二集』(1973・集英社)』
…饒舌体の文章で物語るユーモアとペーソスを基調とした作風であった。《軍港行進曲》(1927)発表後,精神異常に陥るが,やがて回復,大阪の画家小出楢重とのかかわりを軸にした《枯木のある風景》(1933)により文壇に復帰,作風も叙述体に変わり,《枯野の夢》《子の来歴》(ともに1933),《器用貧乏》などを発表,戦後の代表作は《思ひ川》(1948)である。随筆的評論も巧妙で《芥川竜之介》は力作。…
※「枯木のある風景」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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