日本大百科全書(ニッポニカ) 「架橋高分子」の意味・わかりやすい解説
架橋高分子
かきょうこうぶんし
cross linking polymer
高分子で多数の構成単量体や、線状高分子の鎖の間を化学結合で連結し、三次元の立体的な構造をもったものをいう。このような構造にできあがったものは加熱しても、分子の熱運動によって分子が流動して液体となるようなことはない。互いの分子が強固な化学結合によって立体的に架橋されているからで、強く加熱するとその高分子は熱分解がおこる。もちろんいかなる溶媒にも溶けない。このような高分子は、フェノールとホルムアルデヒドとからつくられたフェノール樹脂、その他ユリア(尿素)やメラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、加硫ゴムなどの硬化物がある。
これらの成形は、初め分子量の小さい単量体や、やや高分子量になっている線状構造化合物の加熱によって溶融する程度の第一次高分子(プレポリマー)を型などに入れて加熱して、内部で化学反応させて架橋を完成させて三次元の構造をもった最終構造に仕上げる。架橋の程度によって、弾性をもった加硫ゴムのような軟らかなものから、エボナイトのように硬い物性を示すものまである。
現在は架橋剤を用いないでポリエチレンのような安定な高分子でもγ(ガンマ)線などの高エネルギー線を照射して架橋を行う。
[垣内 弘]