栄養段階(読み)えいようだんかい(その他表記)trophic level

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「栄養段階」の意味・わかりやすい解説

栄養段階
えいようだんかい
trophic level

食物連鎖における各段階をいう。生物遺骸排泄物などを分解して無機物をつくる分解者光合成などによって無機物から有機物をつくりだす生産者や,生産者がつくる有機物を消費する消費者などがある。分解者と消費者の境界はあいまいで,便宜的なものとされる。各栄養段階を個体数などに応じて示し,積み重ねると,ピラミッドの形をとる。それを,生態ピラミッドと呼ぶ。

それぞれの栄養段階の有機物の収支は次のように考えられる。生産者が単位面積あたり一定の時間内に光合成などによって生産する有機物の量は,総生産量という。生産者は光合成で有機物を生産すると同時に,呼吸によって有機物を消費する。そのため,総生産量から呼吸で消費される量(呼吸量)を差し引いたものが,純生産量となる。生産者である植物は,1次消費者に食べられたり,枯れたりしてその一部が失われる。一定時間内に,1次消費者に食べられる量「被食量」と,枯れて失われた量「枯死量」を,純生産量から差し引いた量が成長量となる。

消費者である動物は,下の栄養段階の生物を捕食する。しかし食べたものの一部は消化できず,外部に排出する。その量を不消化排出量といい,摂食量から不消化排出量を差し引いた量を消費者の同化量という。消費者の同化量は,生産者の総生産量にあたる。同化量から消費者の呼吸量を差し引いた量は,生産者の純生産量にあたる。消費者の成長量は,同化量から呼吸量,被食量,死滅量を差し引いた量になる。(→生産生態学

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「栄養段階」の意味・わかりやすい解説

栄養段階
えいようだんかい

生態系内のエネルギーの流れや物質循環における生物の役割を類型的に分けたもの。アメリカの生態学者リンドマンR. L. Lindemanによって1942年に提唱され、広く用いられるようになった。太陽エネルギーを利用して無機物から有機物を合成する生産者、これを利用する動物からなる消費者、およびこれらの死体排出物を分解する分解者の三つの段階に分ける。さらに消費者については、生産者を直接摂食する第一次消費者(第二次生産者ともよぶ)、これを摂食する第二次消費者、以下順に第三次、第四次……のように細分する。生産者から数えて同じ数を経て食物を得ている生物を「同じ栄養段階に属する」という。しかし、生態系の食物連鎖は複雑で、緑色植物や単食性動物を除く多くの生物は二つ以上の栄養段階に属し、また同種の個体でも発育期の違いや環境の差によって違った栄養段階に属することがある。

[牧 岩男]

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