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生産生態学 せいさんせいたいがくproduction ecology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

生産生態学
せいさんせいたいがく
production ecology

生物生産を研究対象とする生態学の一分野。生物生産とは生物の物質量の増量をいい,自己の体の増量すなわち成長と,子孫を生み出していく増殖とに大別できる。初期の生産生態学は,植物群集での光合成に基づく生産をおもな研究対象としていたが,その後,複雑な生態系内での生産関係全体を視野に収めるようになった。
生物を機能で大きく分けると生産者,消費者,分解者になる。生産者が無機物から有機物を合成して生物体をつくることを一次生産という。生態系や群集の中で緑色植物 (生産者) によって太陽エネルギーが化学エネルギーに変換されるプロセスである光合成は,一次生産のほとんどをになっている。一次生産によって得られる有機物の量を一次生産量といい,一次総生産量と一次純生産量に分けられる。一次総生産量は,その生態系や群集の中で呼吸に消費される有機物を含めた光合成の総量である。一次純生産量は,その生態系や群集の中で呼吸に消費される量を一次総生産量から引いた有機物の量である。二次生産は消費者 (おもに動物) が他の生物の合成した有機物を摂食することから始る。二次生産量の計算は,しかし困難である。摂食された有機物の一部は消化されずにそのまま体外に排出される。それ以外の,消費者の体内に同化された有機物量も,呼吸に消費されたり代謝され,また爪や毛などが常に脱落するため,こうした量を差引かないと算出できない。さらに繁殖が絡むと繁殖に費すエネルギーも考慮しなくてはならない。動物の場合,移動するので完結した生態系として捕えるのが困難である。このような理由で,信頼できる二次生産量のデータはほとんど得られていない。
生態系の中では,気候,収穫,汚染などによってエネルギーの流出が生じる。物理的条件が好ましいとき,あるいはエネルギー補助がある場合に大きい生産量が生じる。エネルギー補助は,降雨林の風雨,河川の潮汐,あるいは化石燃料,動物の働き,あるいは人間が作物栽培に用いるエネルギーなどからもたらされる。ところで,有機物の年間生産量が全消費量に等しく,有機物量の出入りがまったくないとすれば,成熟した熱帯雨林にみられるように一種の生態的極相ないし安定状態にあるといえる。あるいは持続可能な農業にみられるように,総生産量が呼吸量と移出量の合計に等しければ,これもまた一つの安定状態といえる。一次生産量とその従属栄養者 (→従属栄養 ) による利用が等しくない場合,有機物は蓄積されるか,不足するようになるので,その群集は生態的遷移の過程を経て変化する。遷移は極端な独立栄養や従属栄養のいずれからでも安定状態に向う。

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世界大百科事典内の生産生態学の言及

【生態学】より

…そして陸上群集へも逆輸入され,群集は物質系としての生態系の生物部分であるとする見方へと発展するが,これは地球上の物質循環を主題とする地球化学にむしろ近いものである。なお,この湖沼学などから,有機物生産を指標として,生物の生態を明らかにしようとする生産生態学も1950年ころから生じたが,これは生態系の研究とはまったく別のアプローチである。
[個体群生態学の発展]
 エルトンの(1)の側面は,これも19世紀からすでに存在していた人口学,害虫学,水産学での個体数の研究に引き継がれることになったが,その発展は1920年代に始まり,群集の研究とはまったく別個に進んだ。…

※「生産生態学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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