改訂新版 世界大百科事典 「栗原百寿」の意味・わかりやすい解説
栗原百寿 (くりはらはくじゅ)
生没年:1910-55(明治43-昭和30)
農業経済学者。茨城県に生まれ,1937年東北大法文学部卒後,帝国農会で《農業年鑑》《帝国農会報》を編集のかたわら,マルクス経済学の立場から日本資本主義の農業構造を分析した。講座派理論家のなかでも農業統計を基礎に精密な分析を重ね,〈中農肥大化論〉を主張した《日本農業の基礎構造》(1943)は日本資本主義論争に新分野を開いた。治安維持法の違反で検挙され,第2次大戦後は農林省統計調査室などの嘱託。農地改革による〈半封建的〉地主的土地所有の崩壊と国家独占資本主義による農民の直接支配という〈栗原理論〉を展開し,彼の《現代日本農業論》(1951)などは,公式主義や党派主義にとらわれない研究者や農民運動家に熱読された。53年拓大教授。遺稿《農業問題の基礎理論》(1956)など優れた分析が多い。
執筆者:旗手 勲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報