核医学検査(読み)カクイガクケンサ

デジタル大辞泉の解説

かくいがく‐けんさ【核医学検査】

微量の放射性同位元素を目印として含む医薬品を用いた検査。放射性医薬品患者の体内に投与して画像を得るインビボ検査と、患者から採取した血液や尿など試薬と反応させて試料に含まれる微量物質を測定するインビトロ検査がある。ラジオアイソトープ検査RI検査

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内科学 第10版の解説

核医学検査(検査法)

(1)心臓核医学検査の特徴
 ごく微量の薬剤を同位元素(radioisotope:RI)で標識した放射性薬剤を投与し,臓器のさまざまな機能を映像化する手法を核医学検査(シンチグラフィ)とよぶ.なかでも,心臓を対象とする場合が心臓核医学検査である.
 心臓核医学検査にはほかの画像診断にはないすぐれた特徴がある(表5-5-8).まず本検査のおもなものに心筋血流分布そのものを映像化する手法がある(心筋血流シンチグラフィ;myocardial perfusion scintigraphy).これを用いると虚血病変を高いコントラストで描出することができ,かつ負荷の検査も容易である.したがって虚血の有無やその重症度を判定するに最も有力な検査である.また心筋の性状評価にすぐれており,特に心筋の生存能(バイアビリティ)の判定に有効で,障害心筋の中で治療によって機能回復する虚血心筋を正しく同定できる.したがって虚血性心疾患の治療方針を決定する上で役立つ.他方心臓核医学検査は長年広く利用されてきた実績があり,豊富な症例に基づいたエビデンスの蓄積があるため,これに基づいたガイドラインも整っている(Klockeら,2003;JCS2010).さらには最適な放射性医薬品を用いて種々の分子細胞機能情報を映像化でき,分子イメージングの臨床応用が可能である(玉木,2003).
 表5-5-9に現在臨床で応用可能な検査項目と各々に用いられる放射性薬剤をあげる.その主要な検査法には心筋血流シンチグラフィによる血流評価,心RIアンギオグラフィによる心機能測定などがある.また分子医学の進歩とともに,新しい放射性医薬品が続々登場し,心筋内のエネルギー代謝や神経機能などのさまざまな生化学的情報が映像化できるようになり,核医学検査のもつ多様性がさらに明確になってきている(玉木,2003).
 以下に心臓核医学検査法を解説し,併せて最近の話題も提供する.
(2)血流シンチグラフィ(心筋血流 single photon emission computed tomography(SPECT))
 血流シンチグラフィは心筋血流製剤を静脈内投与した後,SPECT装置を用いて心筋血流分布の断層(SPECT)像を得る方法である.心筋血流製剤には201Tl-chloride(塩化タリウム)や99mTc-MIBI,99mTc-テトロホスミンが用いられているが,いずれも投与後速やかに血管外に滲みだし心筋血流に応じて心筋細胞に摂取される.その分布を映像化するのが心筋血流シンチグラフィである.多くの場合運動負荷やアデノシンやジピリダモールなどの心筋血流を増加させる薬剤を用いた負荷を行い,最大負荷時に心筋血流製剤を静脈注射する.なお心筋血流製剤は投与した際の血流分布にそって細胞内にとどまっているため,負荷終了後患者が落ち着いた後にSPECT装置を用いて最大負荷時の心筋血流分布を撮影できる点が,負荷中の撮影が求められるほかの画像診断法と異なる利点である(玉木,2003;Klockeら,2003;JCS2010).多くの場合,安静時の心筋血流分布と対比して負荷で誘発される虚血の有無や程度を判定する.
 心筋血流SPECTの断面の表示法と典型的な画像を図5-5-34に示す.通常心筋血流の多い左室心筋が描出される.左室心筋のオリエンテーションをつけてどの区域に血流低下があるかを判定する.ついで血流低下のあった区域の分布が安静時に分布が変化するかを判定する.すなわち読影には負荷時に比べて安静時の分布の改善(再分布やfill-inと称する)の有無を判定する.分布の改善する領域は虚血心筋であり,逆に分布の改善しない領域は梗塞心筋と判定される.この現象を利用して心筋生存能(バイアビリティ)判定の判定を行う.虚血心筋を伴う領域は血行再建術後の機能回復が期待できる(玉木,2003;Klockeら,2003;JCS2010).他方虚血心筋は危険にさらされている心筋(jeopardized myocardium)を示しており,広範囲に虚血を呈する場合は予後不良とされる.最近の報告では虚血心筋が左室心筋の10%をこえる重症虚血症例では血行再建術などの積極的治療により虚血を軽減する治療によって生命予後を改善させることが必要とされる.さらには左室心筋の血流分布をより客観的,定量的に表示するため,同心円表示法が利用される.これは短軸断層像の心尖部スライスを中央にし,心基部に行くほど外側になるように同心円表示をするもので,これにより1枚の表示で左室心筋全体の血流分布を表示でき,かつ負荷時と安静時を対比することで分布の改善を判定できる.
 心筋虚血と心筋梗塞のそれぞれ典型的な症例を図5-5-35,5-5-36に示す.図5-5-35では負荷時に前壁,心尖部にfill-in(分布の改善)を示す広範囲の心筋虚血を認める.同心円表示では心筋虚血の位置と広がり,およびfill-inの状態が理解しやすい.図5-5-36は前壁から側壁にかけての広範囲の血流低下があり,負荷時も安静時も分布は変わらず,梗塞心筋と考えらえる.このように同心円で表示できるため,客観的な血流分布や分布の改善(再分布)を判定しやすくなる.ただ同心円表示では左室拡大などの形態情報がないこと,心尖部や心基部の設定により表示が左右されることなど,限界もあるため,オリジナルの画像とともに利用することが求められる(玉木,2003).
 最近多くの場合でSPECT収集の際に心電図同期収集を行うことによって,心筋血流とともに心機能の解析を行うようになった.これを用いれば心機能と心筋血流とが同じ断面で解析可能であり,かつ左室機能の解析もできる.図5-5-37に前壁心筋梗塞例の拡張末期と収縮末期SPECT像,各種機能の同心円マップ像と三次元立体表示像を示す.このような定量的解析ソフトウェアが臨床の場で広く利用されており,左室容積,駆出率をはじめ,左室容量曲線の各種パラメータも算出され,心機能の定量的解析が容易となる.
 このように心筋血流イメージングは虚血性心疾患のスクリーニング検査から病態解析,さらには治療の適応や効果判定などさまざまな目的に利用することができる.とりわけ冠動脈造影検査に必要性や,血行再建術などの治療の適応を判断する上で心筋血流シンチグラフィの役割はますます大きくなってきている(玉木,2003;Klockeら,2003;JCS2010).
(3)分子・細胞機能イメージング
 核医学検査の魅力は,機能や血流とは異なる新しい分子・細胞機能情報を映像化できる点である.その1つに心筋エネルギー代謝の映像化がある.心筋代謝研究の歴史は古いが,この情報をin vivoで非侵襲的な映像化を可能にしたのがポジトロン断層撮影法(PET)である.特に虚血性心疾患でグルコース代謝を映像化する18F標識フルオロデオキシグルコース(FDG)の集積の有無から,虚血心筋と梗塞心筋とを鑑別することができる.この方法は血行再建術で機能回復するかどうかを高い精度で予測することができ,心筋バイアビリティ判定のゴールドスタンダードとされている(玉木,2003;Klockeら,2003;JCS2010).多くの場合,通常の心筋血流SPECTを用いて心筋バイアビリティの判定は可能であるが,心機能低下症例で再分布が不明瞭な症例ではFDGを用いた検討が役立つことがある(図5-5-38). 近年FDGの集積がマクロファージや肉芽病変の活動性を反映することがわかり,炎症性病変の検出に利用されるようになっている.FDG-PET検査の新しい領域での有効性が示されているのが,動脈硬化病変の活動性の評価や(図5-5-39),心サルコイドーシスの同定である(図5-5-40).活動性の病変を陽性に描出できるFDGを用いた手法は,今後病変の活動性を判定するだけでなく,治療効果判定にも応用できる可能性をもつ. さらにわが国では123I標識の放射性薬剤の臨床応用が進んでおり,その1つ123I-β methyl iodophenyl pentadecanoic acid(BMIPP)はわが国で臨床開発された放射性薬剤である(JCS2010).本剤は貯蔵型脂肪酸であり,投与後心筋細胞に摂取された後,長時間心筋内にとどまり,その心筋集積は脂肪酸の利用と関係が深い.特に注目されるのが,高度(または繰り返し)の虚血心筋では血流が改善しても代謝異常が遷延するとされ,虚血の既往を判定できる(ischemic memory imaging)と考えられている.実際不安定狭心症や冠攣縮性狭心症では検査時の血流分布に異常はなくても,過去の虚血を反映して高率にBMIPPの集積低下がみられる(図5-5-41).また心筋症では高率に変性心筋が脂肪酸代謝の低下を示すため(図5-5-42)これを利用して肥大型心筋が病態評価やその鑑別診断に利用されている. もう1つの123I標識放射性薬剤として期待されるのが,ノルアドレナリン誘導体の1つである123I-meta-iodobenzylguanidine (MIBG)を用いた心筋交感神経機能イメージングである.健常例では心筋への高い集積がみられるのに対して,交感神経障害を伴う心不全例では心筋への 集積は低下する.特に心不全でも集積の高度低下した例では突然死が多く,予後不良とされる(図5-5-43)(JCS2010).[玉木長良]
■文献
Guideline for climical use of cardiac nuclear medicine(JCS2010).Circ J, 76: 761-767, 2012.
Klocke FJ, et al: ACC/AHA/ASNC Guidelines for clinical use of cardiac radionuclide imaging-executive summary. Circulation, 108: 1404-1418, 2003.
玉木長良編:心臓核医学の基礎と臨床,改訂版,pp1-190,メジカルセンス,東京,2003.

核医学検査(画像検査)

(4)核医学検査
 悪性リンパ腫の診断にはガリウムシンチグラフィが用いられてきた.Hodgkinリンパ腫や中~高悪性度の非Hodgkinリンパ腫などには多くの場合に集積がみられるが,小病変や低悪性度のMALTリンパ腫などでは検出率が低い.
 骨浸潤を示す腫瘍では骨のリン酸代謝を反映する骨シンチグラフィが診断に使われる.一度に全身の骨の画像が得られ,概して検出感度も高いが,例外的に骨髄腫では検出能が低いことに注意が必要である. 糖代謝を画像化する18FDG(18F-fluorodeoxyglucose)を使用したポジトロン断層(positron emission tomography:PET)検査は近年保険適応となり,悪性リンパ腫の診断に急速に普及しつつある.全身像が撮像でき,病変の検出能もガリウムシンチグラフィより高く,現在,主流となっているPET/CT装置では1度の検査でPET画像とCT画像の双方が得られ,形態と機能の両面からの診断が可能である.発症時のステージング(図14-5-9),治療効果判定や残存病変の評価(図14-5-10,14-5-11),再発診断などに有用な検査である.組織型により検出感度に差があり,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の検出には,きわめて感度が高いが,MALTリンパ腫やT細胞リンパ腫ではやや劣る.[今井 裕・橋本 順]

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