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出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
全身に広がっているリンパ組織内の細胞が悪性化し、次第に全身の臓器を侵していく病気です。ホジキンリンパ腫(ホジキンという人が最初に報告した)と、それ以外の非ホジキンリンパ腫に大別されますが、互いに似た経過をたどります。
白血病と同様に、化学物質・放射線などさまざまな因子が関連していると考えられています。最近、病原体の関与が推測されており、一部の非ホジキンリンパ腫(バーキットリンパ腫、
このほか、ヒトヘルペスウイルス6型や8型、C型肝炎ウイルスなども発症に関与することが推定されています。
人口10万人に対して1年間に男性約9人、女性約6人の割合で発生します。非ホジキンリンパ腫の場合、50代から次第に増加します。これに対しホジキンリンパ腫では、20代と壮年層の2つのピークを認めます。
欧米人は日本人より発症頻度が高いことが知られていますが、原因はまだ明らかではありません。日本人における頻度は最近とくに増加傾向にあり、その理由として国民年齢層の高齢化のほかに、診断技術の向上、ライフスタイルの欧米化などが指摘されています。
しばしばリンパ節腫脹から始まります。痛みがないため、気がついた時にはかなり大きくなり、また複数部位のリンパ節が同時に腫大してくることもあります。
なお、日本人の場合、リンパ節腫脹以外で起こるリンパ腫(節外性リンパ腫)の形で発症するものが40%ほど存在します。リンパ節以外の全身ほぼすべての臓器から発生する可能性がありますが、日本人では胃から起こる症例が多いといわれています。節外性リンパ腫の場合も症状が乏しく、検診などで偶然見つかることがあります。
全身症状としては、発熱、全身の
検査値の異常として貧血(
診断上最も重要なのは、病変を手術によって切り取り、顕微鏡で組織学的に検査することです(生検)。そして病巣がどの範囲に広がっているか(病期)を決定します。これは病期により治療方針が異なるためです。
病期診断では、体の表面にあるリンパ節は医師の診察のみでわかりますが、体内の病変については画像診断検査が必要になります。CT、MRI、超音波検査、消化管内視鏡検査などを行い、病変の広がりを決定します。最近保険適応となったPET(ポジトロン断層撮影法)を併用することで、悪性リンパ腫のより正確な病期診断が可能になりました。
病期は一般的に次のように分類します。
Ⅰ期:ひとつのリンパ節領域だけに病変が存在する時期
Ⅱ期:
Ⅲ期:横隔膜の上下に病変が存在する時期
Ⅳ期:病変がリンパ組織以外の部位に広汎に及んでいる場合
悪性リンパ腫のうち、特徴的な巨細胞(ホジキン細胞やリード・スタインバーグ細胞などと呼ばれる)を認めるものをホジキンリンパ腫、そのほかのものを非ホジキンリンパ腫と呼びます。
ホジキンリンパ腫はリンパ球豊富型、
非ホジキンリンパ腫は多くの分類法がありますが、第一に腫瘍細胞の性質からみてB細胞性、T細胞性、NK細胞性などに分ける方法があります。日本人の場合、B細胞性が70~80%を占めるといわれています。
そのほか、進行の速さからみて低悪性度群(
●ホジキンリンパ腫
限局型(前述のⅠ期、Ⅱ期)では化学療法を3~4コース行い、その後病変があった部位を中心に放射線療法を行うのが、最近では一般的になっています。その理由は、全身に広がっているかもしれない病巣を根絶して治すためです。この治療で大部分の人が5年以上生存します。
全身型(前述のⅢ期、Ⅳ期)では化学療法を行います。最近では70%以上の症例で
ホジキンリンパ腫に対する標準的化学療法は、ABVD療法(アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)とされています。
●非ホジキンリンパ腫
ホジキンリンパ腫と同様に、限局型(I期、Ⅱ期)では化学療法を3~4コース行い、その後病変があった部位を中心に放射線療法を行うのが一般的です。限局型に対して放射線療法と化学療法を併用して行った場合、70%以上の症例で長期生存が得られます。
全身型(Ⅲ期、Ⅳ期)は、強力な化学療法を行うことにより60~80%の症例で寛解が得られ、2年以上寛解を継続した例では長期生存が期待されます。
非ホジキンリンパ腫に対する現時点での標準的化学療法は、CHOP療法(シクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)です。
B細胞性リンパ腫の90%以上の症例に発現しているCD20抗原と特異的に結合するモノクローナル抗体のリツキシマブは、前治療がある症例に単独で使用しても30%以上の奏効率を示しましたが、リツキシマブと化学療法を併用すると非常に高率で寛解が得られることが、多くの研究より判明しました。したがって、現在B細胞性非ホジキンリンパ腫に対しては、リツキシマブと化学療法が標準的治療法と考えられています。
化学療法に
血液内科専門医の診察を受けることが先決です。悪性リンパ腫には多くの病型があるうえに、最近の予後因子に関する研究の進歩などにより、患者さんごとに最適な治療を行う試みが各医療機関で行われています。悪性リンパ腫の多くは治癒の機会が残されているので、治療法について担当医と十分相談したうえで、患者さん自身が納得できる治療を受けることが重要です。
和泉 透
悪性リンパ腫は、リンパ組織ががん化して起きる病気です。リンパ節に発生することが多いのですが、どの臓器にもリンパ組織があるため、咽頭、
主な症状はリンパ節のはれ・しこりや圧迫感で、
原因はまだ不明ですが、一部でウイルス(HTLV1、EBV、HHV8など)や、ヘリコバクター・ピロリ菌(HP菌)が関与することがわかっています。
リンパ節や
悪性リンパ腫は、ホジキン病と非ホジキン病(NHL)の2つがあります。NHLはB細胞型とT細胞型に大別され、それぞれが多くの組織型に分かれています。日本人には非ホジキンリンパ腫が多くみられます。
腫瘍の広がりをみるために胸腹部CT、PET、
悪性リンパ腫の治療法としては、化学療法、放射線療法、抗体療法、造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)移植があります。組織型や病気の進行状況などにより、これらを組み合わせて治療します。
代表的な化学療法としては、3種類の化学療法剤(エンドキサン、アドリアシン、オンコビン)に副腎皮質ホルモンを組み合わせるCHOP療法があります。び慢性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)では、抗体療法(リツキサン)の併用が標準療法になっています。患者の状態、病院によって違いがありますが、入院は最初だけで、その後の多くは外来で治療します。
また、腫瘍が頸部など局部に限られている場合は、放射線療法だけを行います。HP菌が関与するMALTリンパ腫の多くは、初めの除菌だけで治療します。
治療成績は病期、年齢、身体的自立度(PS)、組織型、血清LDH値、節外腫瘍の数などにより影響を受けます。NHLの約半数を占めるDLBCLでは、高齢者でも、完全
早期に発見・診断し、元気なうちに治療を開始すれば治すことが可能な疾患です。異常なぐりぐりを触れたら早めに受診することが大切です。
普通の生活や食事が可能ですが、治療中は白血球が減少していたり、免疫が抑えられたりして感染症にかかりやすくなっています。また、完全寛解になっても再発することがあります。高熱が出たり、しこりや体重減少などの異常を感じたら、早めに病院を受診しましょう。
治療してから数年経過して骨粗鬆症が進行し、脊椎圧迫骨折などを起こすことがあります。とくに閉経後の女性は早くから予防対策が必要です。
村井 善郎
悪性リンパ腫は全身のリンパ節やリンパ組織に発生するがんです。ホジキン病と非ホジキンリンパ腫に分けられますが、日本では非ホジキンリンパ腫がほとんどです。3~10歳の発病が過半数を占め、女児よりも男児に多くみられます。
主に首や、
首、
ホジキン病は首の無痛性のしこりとして発生することが多く、隣接したリンパ節に転移していきます。非ホジキンリンパ腫は、全身のリンパ組織のどこからでも発生しますが、体表面のリンパ節のほか縦隔や腹部に多くみられます。
縦隔の場合、初期はほとんど無症状で、腫瘍が大きくなると呼吸困難や顔面のむくみ、食べ物が飲み込みにくいといった症状が現れます。腹部では腸が圧迫されて腹痛、おなかが張るといった症状がみられます。
抗がん薬などの薬剤を組み合わせた化学療法が中心です。ホジキン病では、抗がん薬と放射線による治療が行われ、治療成績が向上しています。最近は、腫瘍の部位が限られている場合に放射線を照射しない治療も検討されています。
非ホジキンリンパ腫では、がんの組織診断と病気の広がりによって最も適した化学療法が決められます。外科的治療や放射線照射は不要なことが多く、化学療法を優先します。
治療の進歩により、早期のものはもとより、進行したものでもかなり治るようになりました。
かぜにかかってもいないのに首などのリンパ節がはれて大きくなる時は、小児科の医師によく調べてもらうことが必要です。胸やおなかの症状が気になったら受診します。できるだけ早期に抗がん薬の治療を開始することによって治癒率は高くなるので、他のがんと同様に早期発見・早期治療が大切です。
片岡 哲
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
白血球の一種であるリンパ球ががん化する病気で、それがリンパ節や
●おもな症状
初発部位は
①血液検査
▼
②超音波/CT/MR /ガリウムシンチ/PET-CT
▼
③リンパ節の生検(病理検査)
▼
④リンパ管造影
血液検査と病巣の細胞診で診断
血液検査では血液一般検査、凝固・線溶検査(→参照)のほか、悪性リンパ腫細胞の検出が行われます。さらに、大きくなったリンパ節やリンパ組織に針を刺し、細胞を吸引して細胞診がなされます。ここで悪性リンパ腫の診断がつきます。くわしい分類のためには、病巣を試験切除して病理検査を行います。
最近では、モノクローナル抗体を使った細胞表面マーカーの検索によっても種別の判定が可能になりました。
病気の広がり具合をみるためには、PET-CT(→参照)が威力を発揮し、リンパ管造影や超音波、CT、MR(→参照)なども利用されます。
出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報
リンパ組織に発生した進行性悪性の腫瘍(しゅよう)で、癌(がん)と同じ性質をもっている。原因は不明の点が多いが、なかにはウイルスが原因と確定されつつあるものもある(バーキットリンパ腫)。発生部位は、リンパ球がつくられるところならどこにでもできるが、もっとも多いところは、頸(けい)部、わきの下、鼠径(そけい)部のリンパ節であり、進行すると全身のリンパ節からさらに骨髄内にも拡大し、血液中にも多数の病的リンパ球が出現する。白血性悪性リンパ腫といわれ、リンパ性白血病と同じ症状を示すことが多い。顕微鏡所見からホジキン病と非ホジキンリンパ腫に大別され、さらに非ホジキンリンパ腫はリンパ肉腫、細網肉腫、濾胞(ろほう)性リンパ腫およびバーキットリンパ腫に細別される。また最近になって、増加しているリンパ球の形からの分類が行われている。病巣の広がり方からI期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期に分けられるが、I、Ⅱ期では、はれたリンパ節が横隔膜のいずれか一方にあり、Ⅲ、Ⅳ期になると両側に広がり、Ⅳ期では全身的にびまん性に広がる。外科手術、放射線照射、抗癌剤(エンドキサン、ビンクリスチン、アドリアマイシン、ブレオマイシンなど)、副腎(ふくじん)皮質ホルモンがそれぞれの病期にあわせて用いられるが、Ⅲ、Ⅳ期は予後が悪くなり、I、Ⅱ期では完全に治る例もある。
また、免疫をその役目としているリンパ組織が侵されるために、細菌感染とかウイルス感染に対する抵抗力が低下して、感染症にかかりやすくなったり、自己免疫性疾患が合併しやすくなる。最近は、免疫力を強くするためにBCG、CWSその他の免疫賦活剤が併用されて効果を高めている。
[伊藤健次郎]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
リンパ節や脾臓等のリンパ組織を構成するリンパ網内系細胞の腫瘍性変化によって,これら組織の腫張を起こす疾患。病因として種々の微生物やウイルスの感染があげられるが,その多くは確かでない。リード=スターンバーグ細胞Reed-Sternberg cellと呼ばれる巨細胞の存在を特徴とし若年層に多いホジキン病と,非ホジキン病に大別される。さらに,増殖形態(濾胞性か瀰漫(びまん)性か),増殖細胞の性状あるいは予後などによって,種々の病型に分類される。他のリンパ節腫張をきたす疾患との鑑別や病型診断は腫瘍の一部を切り出して確定する。放置すると全身のリンパ組織に広がり,腫瘤による圧迫症状や他臓器への浸潤をおこし患者は死亡する。種々の免疫学的異常を伴うことが多く,また体内を流れる血液中に腫瘍細胞が出現(白血病化)することもある。治療として放射線照射や種々の抗癌剤の投与が行われるが,ホジキン病の一部を除いて予後は悪い。
執筆者:浅野 茂隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…どの系統の血球が腫瘍になったかにより,顆粒球性,リンパ球性,単球性に分け,また白血病の細胞が成熟する傾向を示さず,急激な経過をとる急性白血病と,成熟傾向があり,ゆっくりした経過をたどる慢性白血病に分類される。リンパ節でリンパ球が腫瘍化したものは悪性リンパ腫といい,特徴ある大型の細胞が出現するホジキン病と,そうでない非ホジキンリンパ腫に大別される。白血病と悪性リンパ腫は代表的な血液の癌である。…
※「悪性リンパ腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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