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椀久物 わんきゅうもの

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

椀久物
わんきゅうもの

歌舞伎舞踊および日本音楽の一系統。大阪の豪商椀屋久右衛門 (役名は久兵衛) が新町の遊女松山太夫に入れ込んで,豪遊のはてに座敷牢に幽閉され,発狂して牢を抜け出し町をさまよい歩いたという実話を取り入れたもの。浄瑠璃では,紀海音作の義太夫『椀久末松山』と1世都太夫一中作曲『椀久末の松山』 (上中下の3巻) があるが,前後関係は明らかではない。一中節の下巻「椀久狂乱道行」が現在に伝わるほか,今日の代表的なものには,常磐津では,3世および4世中村歌右衛門が上演した『三面 (みつめん) 椀久』 (俗称『歌右衛門椀久』) や,素浄瑠璃として語られる3世常磐津文字兵衛作曲の『椀久色神送』,清元では,5世清元延寿太夫作曲の『幻椀久』がある。舞踊では,最も人気の高い長唄『二人椀久』のほか,1世中村富十郎が踊った『一人椀久』 (『四季の椀久』) を藤間流が伝え,また井上流でも『椀久』として上演される。

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世界大百科事典 第2版の解説

わんきゅうもの【椀久物】

歌舞伎狂言,舞踊,人形浄瑠璃の一系統。大坂堺筋の豪商椀屋久右衛門が新町遊廓で傾城松山太夫にうつつをぬかし,金を入れ上げたため座敷牢に入れられ,発狂して放浪の末,1677年(延宝5)に水死したという実説にもとづく。当時流行した小唄が《落葉集》に収められており,井原西鶴も小説《椀久一世の物語》を書いている。歌舞伎化では,七周忌にちなんで84年(貞享1)大坂で大和屋甚兵衛が演じたのが最初らしく,椀久生き写しと好評を博した。

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