椀久(読み)ワンキュウ

デジタル大辞泉 「椀久」の意味・読み・例文・類語

わん‐きゅう〔‐キウ〕【椀久】

椀屋久右衛門略称。大坂御堂前の豪商で、新町の遊女松山と愛し合い、豪遊の果てに座敷牢へ入れられ、延宝5年(1677)狂死したという。歌舞伎浄瑠璃音曲などに登場する。

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精選版 日本国語大辞典 「椀久」の意味・読み・例文・類語

わん‐きゅう‥キウ【椀久】

  1. 大坂堺筋の豪商椀屋久右衛門の通称。新町の遊女松山になじみ、豪遊のあげくに破産精神に異常をきたして家出し、貞享元年(一六八四)に死んだという。井原西鶴の「椀久一世の物語」のほか、浄瑠璃・歌舞伎所作事・音曲などで、椀久物一類ができるほど多く取り入れられた。
    1. [初出の実例]「椀久(ワンキウ)磯に金銀つかんで、ばっとしたるつけとどけ」(出典浮世草子傾城色三味線(1701)湊)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「椀久」の意味・わかりやすい解説

椀久
わんきゅう

歌舞伎(かぶき)、浄瑠璃(じょうるり)、音曲(おんぎょく)などの一題材。大坂堺筋(さかいすじ)の商人椀屋久右衛門(きゅうえもん)が新町(しんまち)の遊女松山と契り、節分の豆撒(ま)きに金銀を撒き散らすほどの豪遊で、座敷牢(ろう)に入れられ、1677年(延宝5)精神に異常をきたして水死したという実話を、椀屋久兵衛の名で脚色。流行小唄(こうた)や井原西鶴(さいかく)の小説『椀久一世の物語』にも扱われたが、歌舞伎では七回忌にちなんで1684年(貞享1)大坂で大和屋甚兵衛(やまとやじんべえ)が演じたのが最初という。その後、紀海音(きのかいおん)作『椀久末松山(すえのまつやま)』など人形浄瑠璃にも脚色されたが、とくに舞踊、音曲には狂乱物の一系列として多く扱われた。一中(いっちゅう)節『椀久道行』、長唄『其面影二人(そのおもかげににん)椀久』(1774年、9世市村羽左衛門(うざえもん)初演)、常磐津(ときわず)『狂乱廓三曲(みだれごころさとのてごと)(三つ面(みつめん)椀久)』(1839年、4世中村歌右衛門(うたえもん)初演)などが有名。明治以後では、舞踊に初世市川右団次(うだんじ)が演じた『盟約誓十徳(にせかけてちかいのじっとく)』、6世尾上(おのえ)菊五郎初演の『幻(まぼろし)椀久』(岡村柿紅(しこう)作)など、戯曲に初世中村鴈治郎(がんじろう)が得意にした渡辺霞亭(かてい)作『椀久末松山』をはじめ、田村西男作『椀久』、真山青果(せいか)作『椀屋久兵衛』などがある。

[松井俊諭]

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改訂新版 世界大百科事典 「椀久」の意味・わかりやすい解説

椀久 (わんきゅう)

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「椀久」の解説

椀久
(通称)
わんきゅう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
けいせい袖の海 など
初演
元禄3.1(京・万太夫座)

椀久
(別題)
わんきゅう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
わん久
初演
弘化4.1(江戸・市村座)

椀久
〔浄瑠璃〕
わんきゅう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
享保16.3(大坂・佐渡島座)

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世界大百科事典(旧版)内の椀久の言及

【椀久物】より

…大坂堺筋の豪商椀屋久右衛門が新町遊廓で傾城松山太夫にうつつをぬかし,金を入れ上げたため座敷牢に入れられ,発狂して放浪の末,1677年(延宝5)に水死したという実説にもとづく。当時流行した小唄が《落葉集》に収められており,井原西鶴も小説《椀久一世の物語》を書いている。歌舞伎化では,七周忌にちなんで84年(貞享1)大坂で大和屋甚兵衛が演じたのが最初らしく,椀久生き写しと好評を博した。…

※「椀久」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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