改訂新版 世界大百科事典 「業績録」の意味・わかりやすい解説
業績録 (ぎょうせきろく)
Res gestae divi Augusti
正確には《神皇(しんのう)アウグストゥス業績録》といい,ローマ初代皇帝アウグストゥスが自分の政治的経歴について書きしるした記録。彼は生前に遺書を作成して,その一部には彼自身の治績を記録し,青銅板に刻印して陵墓の入口に設置することを希望していた。ローマに現存する霊廟の前からはこの青銅板は消失しているが,16世紀以降,小アジアで発見された〈アンキュラ碑文〉とこれを補う〈アポロニア碑文〉や〈アンティオキア碑文〉によって,ほぼその全容が明らかになっている。本文35章と付記4章の合計39章から成り,内容上,自己の受けた栄誉,私財から公共の目的に支出された金銭,自己の勝利と征服,国家における地位についての記述に四分することができる。ローマ国家の共和政から帝政への移行という政治的変革期の歴史を再現するうえで,第一級の史料的価値を有する。全文邦訳は《西洋法制史料選I古代》に収められている。
→アウグストゥス
執筆者:本村 凌二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報