構造主義人類学(読み)こうぞうしゅぎじんるいがく(英語表記)structural anthropology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「構造主義人類学」の意味・わかりやすい解説

構造主義人類学
こうぞうしゅぎじんるいがく
structural anthropology

制度,慣習など社会的事実の解釈を,「構造」の概念を用いて行う人類学の学派をいう。フランスの人類学者 C.レビ=ストロースによって 1940年代から提唱された。それまでの機能主義人類学,特にイギリスの社会人類学者 A.ラドクリフ=ブラウンは,社会構造を現実に存在する一連の社会関係であるとし,直接に観察されるものと考えたのに対して,レビ=ストロースは社会現象から抽象された諸概念の相互関係から,意識されない記号体系としての構造概念を考え,その通文化的比較によって人類に普遍な文化を意味づける「より深い実在」を解明する主知主義的な立場をとった。この方法論は,贈与研究などにおける M.モースの「全体的社会事実」の観念や,ソシュールやプラハ学派に代表される構造言語学の流れをくむもので,レビ=ストロースは言語をモデルに,アメリカインディアンの神話分析や婚姻交換ととらえる親族構造の研究などを行なった。これに対して,R.ニーダムは社会的事実という概念を重視し,個別社会の分析から民族誌的な観察をもとに構造分析を行い,知性が社会的なものに優越するというレビ=ストロースの立場を批判した。その後の研究では,M.ダグラスの動物分類,E.R.リーチの神話分析などが注目される。

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