科学的根拠に基づいて、現時点で利用可能かつ最良な方法であることが示され、ある疾患・状態の患者に対して実施されることが推奨される治療法のこと。
「標準治療=並の治療、ありきたりの治療」と誤解されていることがあるが、その時点で有効性と安全性がもっとも確立された治療法が標準治療であり、並の治療という意味ではない。また標準治療は疾患に対して一つとは限らず、複数の選択肢がある場合もある。
医療においては、最先端・最新であることが、かならずしも最良であることと同義ではない。最先端の基礎研究から、さらに数段階の厳正な臨床試験(おもに安全性や投与方法を評価する第Ⅰ相試験、短期的な治療効果・安全性を評価する第Ⅱ相試験、長期的な治療効果や従来の治療法との比較を行う第Ⅲ相試験など)を経て、従来の治療法(その時点での標準治療)と比較して安全性や効果が優れていることが証明され、かつ専門家間の合意が得られて初めて、最良の治療、すなわち新しい「標準治療」と認められる。臨床試験の結果、従来の治療法のほうが安全性や効果が優れている場合ももちろんありうる(その場合には、従来の治療法が引き続き標準治療となる)。
いわゆる「最新治療」のなかには、こうした臨床試験の過程を経ずに、安全性や効果が十分に確かめられていないまま、おもに自由診療(患者の全額自己負担)の形で独自に実施されている治療もある。他方、臨床試験の途上にあり、保険診療の対象に至っていないものの、将来的な保険導入に向けた評価を行うために、一定の条件下で、患者の自己負担によって保険診療と併用することを厚生労働省が認めている治療もあり、これらは「先進医療」とよばれ、区別される。
なお、ときに「一般的に広く行われている治療」という意味で標準治療ということばが使われることもあるため、どちらの意味で使用されているかには留意する必要がある。
[渡邊清高 2018年8月21日]
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