機能性ディスペプシア(読み)きのうせいでぃすぺぷしあ(英語表記)functional dyspepsia

日本大百科全書(ニッポニカ) 「機能性ディスペプシア」の意味・わかりやすい解説

機能性ディスペプシア
きのうせいでぃすぺぷしあ
functional dyspepsia

消化管の炎症など器質的な疾患を原因とせず、機能的な異常が上部消化管におこる症状FDと略される。ディスペプシアは「消化不良」を意味する。心窩(しんか)部(みぞおち)の痛み(上腹部痛)や灼熱(しゃくねつ)感(焼ける感じ)、早期飽満感(食べるとすぐ満腹になる)、食物摂取後のもたれや膨満感などの上腹部症状を慢性的に訴えるが、検査しても胃・十二指腸潰瘍(かいよう)などの器質的疾患は認められず、食道への逆流などの症状も見当たらない。胃を中心とした消化管の運動亢進(こうしん)や低下のほか内臓の知覚過敏がみられ、心理的要因も関係していると考えられる。かつては単に胃炎などと診断されていたが、消化器の明らかな器質的異常が認められず機能的な異常と考えられる場合を機能性ディスペプシアとよぶようになっている。つらい症状が慢性的に続くため、患者のクオリティ・オブ・ライフは著しく低下する。

 下部消化管の機能異常である過敏性腸症候群などに対しては「機能性消化不良」という表現が使われていたが、これに胃を中心とする上部消化管の機能性ディスペプシアを加えて「機能性消化管障害」と考えるようになっている。国際的な診断基準では、心窩部痛、心窩部灼熱感、早期飽満感、食後のもたれ感の四つの症状のうち、一つ以上が慢性的に続いている場合を機能性ディスペプシアと診断するとしている。治療食生活を含めた生活習慣の改善のほか、症状に応じて保険適用となった複合的な薬物療法が行われる。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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