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食道炎 しょくどうえんesophagitis

翻訳|esophagitis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

食道炎
しょくどうえん
esophagitis

食道の炎症で急性症と慢性症とに分れる。 (1) 急性食道炎 感染,化学的刺激 (酸,アルカリ,消毒液の誤飲など) ,機械的刺激 (外傷,極度に熱いとか冷たい食物など) などが原因となる。症状は食物の嚥下時の不快感から疼痛まで種々で,ほかに出血や発熱もみられる。酸,アルカリなどの誤飲によるものは重篤で,激しい疼痛,ショック症状などを呈する。 (2) 慢性食道炎 急性症の原因のほかに,慢性静脈うっ血,プランマー=ビンソン症候群などが原因となる。症状は比較的軽いが,炎症が食道壁深層に及べば,内腔が狭少化して,嚥下困難となる。 (3) 逆流性あるいは消化性食道炎 胃液または腸液が食道に逆流し,その消化作用で炎症を起すもので,食道炎のなかで最も多いもの。裂孔ヘルニア,先天性短食道,食道胃吻合術,食道空腸吻合術などに続発しやすい。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

家庭医学館の解説

しょくどうえん【食道炎 Esophagitis】

[どんな病気か]
 なんらかの刺激によって食道に炎症をおこしたものです。
 食道の粘膜(ねんまく)は皮膚の表皮(ひょうひ)と同じ扁平上皮(へんぺいじょうひ)でおおわれているため、酸やアルカリに弱く、さらに、全身性の病気から感染症にいたるまで、皮膚炎をおこす原因となる病気のほとんどは同様に食道粘膜もおかすと考えられます。
[原因]
 食道炎の原因はいろいろあります。原因別に食道炎の種類をみてみましょう。
■逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)
 食道炎のなかでもっとも多くみられるもので、消化液の胃液や十二指腸液(じゅうにしちょうえき)(胆汁(たんじゅう)、膵液(すいえき))が食道まで逆流し、その刺激で食道が炎症をおこすものです。
 逆流の原因は、食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニア(横隔膜(おうかくまく)より下にあるはずの胃の一部が、横隔膜より上の胸腔(きょうくう)にはみ出す)によるものがもっとも多くみられます。
 胃の一部が胸腔にはみ出すと、胃の内容物の逆流を防止している噴門部(ふんもんぶ)の筋肉のはたらきが低下し、簡単に胃の内容物が食道に逆流してしまうのです。
 食道裂孔ヘルニアは、とくに肥満や妊娠などで腹圧が上昇したり、年をとって背骨が曲がったり、食道の周囲の組織がゆるむとおこりやすくなります。食道炎が中年以降の女性に多いのはこのためです。
 また、胃を手術した人にもよくみられ、これは胃切除後逆流性食道炎といわれます。とくに胃を全部摘出した人や、噴門(ふんもん)(胃の入り口)付近の部分を摘出した人に多くみられます。
■感染性食道炎(かんせんせいしょくどうえん)
 細菌類によっておこる食道炎です。まれに咽頭炎(いんとうえん)などの上気道感染の原因となる細菌や、結核(けっかく)、梅毒(ばいどく)にともなっておこることがありますが、多くは魚の骨などの異物が食道粘膜にささり、そこから細菌が入っておこるものです。
 最近は後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん)(エイズ)や悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の患者さんや、抵抗力がないお年寄りなどに、カンジダという真菌(しんきん)(かびの一種)が感染しておこる食道炎も増えています。
■腐食性食道炎(ふしょくせいしょくどうえん)
 酸やアルカリなど、粘膜を腐食する液体(塩酸や農薬など)を飲んだときにおこるものです。
■薬剤性食道炎(やくざいせいしょくどうえん)
 薬剤によっておこる食道炎で、その原因のほとんどは抗生物質(テトラサイクリン系のもの)、カリウム製剤、消炎鎮痛薬などの錠剤やカプセルが、食道にひっかかってとどまることでおこります。
 したがって、薬を寝たまま、あるいは水なしで飲むことはやめましょう。
■放射線性食道炎(ほうしゃせんせいしょくどうえん)
 放射線治療を受けた後におこるものです。放射線治療の2~3週間後におこる急性型と、2か月以上たってからおこる慢性型とに分かれます。
 胸やけ、胸骨(きょうこつ)(胸の中央にある縦に長い骨)の裏側の痛み、心窩部(しんかぶ)(上腹部)の痛み、しみる感じなどの症状がおこります。
[検査と診断]
 造影剤(ぞうえいざい)を飲んで食道のX線撮影を行なう食道造影と、内視鏡(胃カメラ)を使って食道内を調べる食道鏡(しょくどうきょう)検査が行なわれます。
 食道鏡検査を行なうと、食道粘膜に発赤(ほっせき)(赤らみ)、浮腫(ふしゅ)(むくみ)、びらん(ただれ)がみられ、さらに進行すると潰瘍、狭窄(きょうさく)がみられます。
 なお、食道がんとの鑑別には、色素(ヨード)を炎症部位に散布して観察したり、粘膜の組織の一部をとって細胞の性質を調べる必要があります。
 さらに、食道内の圧力を調べる食道内圧検査や食道内の酸度を調べるpH測定も行なわれます。
[治療]
 炎症の原因物質を取り除くこと、原因疾患の治療が先決です。そのため、消化器専門医の指示に従わなければなりません。
 逆流性食道炎は、逆流する胃酸を抑えるため、胃酸分泌抑制薬(H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬(そがいやく)、粘膜保護薬など)が使われます。また、十二指腸液の逆流に対しては、たんぱく分解酵素阻害薬などの内服剤による治療が行なわれます。
 薬剤が効かなかったり、何度も再発する場合、強い狭窄がみられる場合には手術が必要になることもあります。
[日常生活の注意]
 逆流性食道炎の場合は枕(まくら)やベッドを工夫し、頭を10~15度高くして寝るのが有効です。
 逆流量を減らすためには、1回の食事量を減らし、睡眠前2時間以内の飲食はやめましょう。脂肪食、アルコール、コーヒーなども控えてください。

出典 小学館家庭医学館について 情報

食の医学館の解説

しょくどうえん【食道炎】

《どんな病気か?》


〈消化液の逆流や細菌感染が原因で起こる〉
 食道に炎症が起こる病気です。原因はさまざまですが、いちばん多いのが胃液などの消化液が食道まで逆流し、その刺激によって炎症を起こすケースです。
 年をとると背骨が曲がり、また食道の周囲の組織がゆるんで、胃が横隔膜(おうかくまく)より上の胸腔(きょうくう)にはみでやすくなります。これが原因で消化液の逆流が起こるケースが典型的です。
 また、細菌感染によっても食道炎は起こります。とくに高齢者は体の抵抗力が落ちているため、カンジダ菌などに感染して食道炎になるケースが多くみられます。
 原因が消化液の逆流の場合は、寝るときに頭を10~15度高くなるようにくふうして寝るといいでしょう。また感染に対しては、魚の骨が食道粘膜(ねんまく)に刺さると、そこから菌が侵入して感染しやすくなるので注意してください。

《関連する食品》


〈感染性の食道炎はカロテンが効果的〉
○栄養成分としての働きから
 ハマチやサバなど、魚の脂(あぶら)に多く含まれるIPA(イコサペンタエン酸)には炎症を抑える作用があり、食道炎の予防に役立ちます。
 またビタミンA、C、Eは食道粘膜の保護・強化に働きます。
 ビタミンAには、レバーやたまごなど動物性食品に含まれるレチノールと、カボチャやニンジンなどの植物性食品に含まれるカロテンがありますが、カロテンには免疫機能を強化する働きがあるので、感染性の食道炎の予防に効果的です。
 同様にビタミンCにも抗ウイルス作用があります。ただし、オレンジなどくだものに含まれる酸味は、食道を刺激したり胃液の分泌(ぶんぴつ)をうながすこともあるので、逆流性食道炎の人はブロッコリーやホウレンソウなどの野菜をやわらかく調理してとるようにしてください。
 ビタミンEは、老化予防の栄養素としても注目されています。サンマやイワシなどの青魚、カボチャやホウレンソウなどに含まれており、日ごろからたっぷりとっておきたいものです。
 逆流性食道炎の場合、胃酸の分泌を抑えるのにビタミンUも有効です。キャベツ、アスパラガス、青ノリ、たまごなどに多く含まれています。

出典 小学館食の医学館について 情報

世界大百科事典内の食道炎の言及

【食道】より

…また一般に胃の消化不良のときは,噴門の閉じ方が不完全となり,不快な胸焼け,おくび,口臭などの原因となる。【和気 健二郎】
[食道のおもな病気]
 食道のおもな病気には食道閉鎖症,食道異物,食道炎,食道潰瘍,食道アカラシア,食道癌,食道憩室などがある。(1)食道閉鎖症 先天的に食道の一部が欠損し内腔が連続していない奇形である。…

※「食道炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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