改訂新版 世界大百科事典 「機能性子宮出血」の意味・わかりやすい解説
機能性子宮出血 (きのうせいしきゅうしゅっけつ)
子宮体内膜からの出血のうち,子宮に器質的病気(たとえば炎症,腫瘍,外傷)もなく,月経でも妊娠でもないときに起こる出血をいう。機能性子宮出血は,(1)妊娠(子宮内妊娠も子宮外妊娠も含む)中の出血でないこと,(2)月経とは区別される出血であること,すなわち出血開始日が月経予定日に一致していないか,または月経予定日に一致して開始した出血が7日以上止血しないで持続する出血であること,(3)子宮体内膜炎がないこと,(4)子宮に腫瘍(子宮頸癌,子宮体癌,子宮筋腫,子宮腺筋症,子宮肉腫,子宮体内膜ポリープなど)がないこと,(5)子宮の外傷がないこと,の5条件がすべて満足されたとき,それと診断される。この病気による出血は下腹痛を伴わないのが特徴である。したがって,激しい下腹痛を伴う性器出血は機能性子宮出血によるものではないと考えてよい。出血性メトロパチーとか,思春期出血,若年性出血,更年期出血,子宮体内膜剝脱(はくだつ)不全症,子宮体内膜不正成熟,子宮体内膜増殖症,過増殖症などと呼ばれている病気も,実は機能性子宮出血の一型にすぎない。月経か機能性子宮出血かを鑑別するには,第1に,出血開始日が予定月経にだいたい一致していれば月経,一致していなければ不正子宮出血(これには機能性出血のほか,器質性子宮出血も含まれる)と診断される。第2に,出血開始日が予定月経に一致していても出血が5日以上続くときには過多月経と診断されるが,この過多月経の原因には子宮体癌,子宮筋腫,子宮腺筋症,子宮体内膜ポリープなどの器質性の過多月経と,これらの病気の発見できない機能性の過多月経とが分類される。五十嵐正雄は機能性子宮出血を出血開始時の卵巣機能にもとづいて,C型(周期性cyclic),A型(無周期性acyclic),P型(旁周期性paracyclic),PM型(閉経後型)の4型に分類するCAP分類を提唱(1962)しているが,上述の過多月経の形で現れる機能性子宮出血はC型として分類される。
→月経
執筆者:五十嵐 正雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報