毛管現象(読み)もうかんげんしょう

精選版 日本国語大辞典 「毛管現象」の意味・読み・例文・類語

もうかん‐げんしょう モウクヮンゲンシャウ【毛管現象】

〘名〙 =もうさいかんげんしょう(毛細管現象)〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕

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デジタル大辞泉 「毛管現象」の意味・読み・例文・類語

もうかん‐げんしょう〔モウクワンゲンシヤウ〕【毛管現象】

液体中に細い管を立てると、管内液面管外よりも高くなるか低くなる現象。液体の表面張力によって生じ、水のように管壁をぬらす場合には上昇する。吸い取り紙などにみられる。毛細管現象

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「毛管現象」の意味・わかりやすい解説

毛管現象
もうかんげんしょう

細い管を液体の中に立てると、液体が管内を上昇して外部の液面より高くなったり、あるいは下降して低くなったりする現象。毛細管現象ともいう。この現象を最初に観察した(1490)のはレオナルド・ダ・ビンチといわれている。もっともよく知られているのは、ガラスの毛管を水中に立てたとき、水が毛管を上昇する場合である。布の一端を水に浸すと水が布を伝わって上昇するなど、実際の生活に関連した例も多い。

 毛管現象は液体の表面張力によって生ずるもので、管壁をつくる固体との間の接触角が90度より小さく、管壁をぬらす場合には、液体は管内を上昇し、90度より大きく、管壁をぬらさない場合は下降する。毛管内の面は曲面になり、これをメニスカスとよんでいる。液面が上昇または下降するのは、このメニスカスに沿って作用する表面張力のためである。のように、半径Rの管を上昇する高さhは、表面張力をγ、接触角をθ、重力加速度をg、液体の密度をρとすると、
  h=2γcosθ/ρgR
になる。水がガラス管を上昇する場合などはθはゼロとしてもよい。下降する場合も同様である。この式では、Rhに比べ十分小さいとしている。この関係は、表面張力の値を測定するのに用いる。

小野 周]


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改訂新版 世界大百科事典 「毛管現象」の意味・わかりやすい解説

毛管現象 (もうかんげんしょう)
capillarity
capillary phenomenon

細管現象ともいう。液中に立てた細い管(毛細管)の中や,2枚の板の細隙の間の液体の高さと,外側の液体の高さとが食い違う現象。その原因は管の壁面を液体がぬらすかぬらさないかによって接触角鋭角または鈍角になり,液面が上に凹あるいは凸になることにある。このとき表面張力によって管内の液中の圧力が外圧より小あるいは大となって,液体がそれに見合うだけ引き上げられる,あるいは引き下げられるのである。

 いま図に示したように細管が半径aの円管で接触角がθであるとする。液面が曲率半径a/cosθの球面でほぼ近似できるとき,表面張力の大きさをγとすれば,圧力差は2γcosθ/aとなるから,液面の上昇hは,gを重力の加速度,ρを液体の密度とすると,ほぼ2γcosθ/ρ gaに等しい。これは,ほぼ2πaの長さの接触点に働く表面張力の上向きの成分2πaγcosθを,引き上げられた液柱に働く重力ρgh・πa2と等置して得られる結果にもなっている。接触角θが鈍角であればcosθは負となり,液面は下降(h<0)することになる。幅2aの細隙のときはh≒γcosθ/ρ gaとなる。また傾いた管では水平面から自由面までの高さがhとなる。aが小さい場合,例えば多孔質の物質中の孔,植物の師管(しかん)などでは,水のように壁をぬらす液体の浸透する距離は非常に大きくなる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「毛管現象」の意味・わかりやすい解説

毛管現象
もうかんげんしょう
capillarity; capillary phenomenon

毛細管現象ともいう。液体中に細い管 (毛管または毛細管という) を入れると,液の種類によって,管内の液面が外部の自由表面より上または下に移動する現象。液体が管を濡らす (付着力が大きく,接触角が 90゜より小さい) ときには液面が上がり,濡らさない (接触角が 90゜より大きい) ときには液面が下がる。管内の液面は曲面となる。管の内外の液面の高さの差を h ,管の内径を r ,液体の密度を ρ ,液体の表面張力T ,管と液体の接触角を θ とすれば,h=2T cos θ/ρgr となる。すなわち,液体と管を決めると,液面の昇降する高さは,管の内径に反比例する。吸取り紙は毛管現象を応用したものであり,植物の茎が水分を吸上げるのもこの現象に基づく。ただし,1回の毛管現象で,土中の水が高い木の先まで送られるわけではない。

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百科事典マイペディア 「毛管現象」の意味・わかりやすい解説

毛管現象【もうかんげんしょう】

毛細管現象とも。液体中に細い管(毛細管)を立てると,管内の液面が管外の液面より上がるかまたは下がる現象。液体の密度をρ,重力加速度をg,表面張力をT,管の半径をr,管の材料と液体との接触角をαとすると,管内の液柱の高さは2T cos α/(rρg)となる。つまりαが直角より小さい(ぬれる)液体(たとえばガラスに対する水)では管内の液面は上がり,αが直角より大きい液体(ガラスに対する水銀)では液面が下がる。管が細いほど上下が大きい。管でなく2枚の板を平行して立てたときも同様に液面が上下する。ランプのしんや吸取紙は細隙による毛管現象の応用。
→関連項目液体

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化学辞典 第2版 「毛管現象」の解説

毛管現象
モウカンゲンショウ
capillarity, capillary phenomenon

液体中に細い管(毛管)を立てると,液が管の壁面をぬらす場合には外部液面より管の内部液面が高く上がり(毛管上昇),ぬらさない場合には管内液面が低くなる現象をいう.液面が管壁をよくぬらす場合(接触角 = 0°)には,毛管上昇の高さを測定して液の表面張力を求めることができる.[別用語参照]表面張力測定法

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法則の辞典 「毛管現象」の解説

毛管現象【capillary phenomena】

液体中に毛管を挿入したとき,液体が壁面をぬらす場合には液面の上昇が,ぬらさない場合には下降が認められる現象.上昇・下降の度合は,毛管圧の式*で示される.

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