改訂新版 世界大百科事典 「気管食道科」の意味・わかりやすい解説
気管食道科 (きかんしょくどうか)
喉頭より下の気道,すなわち下気道と,食道の疾病,生理,病理を扱う臨床医学の一分科。下気道と食道の生理や病理を系統的にとらえようとする試みは古くからあったが,近代の気管食道領域の学問的確立は,気道・食道を検査する技術の発達によるところが大きい。19世紀初頭には,すでに他の内視鏡,主として膀胱や直腸などの内視鏡を応用して食道の検査が行われていたが,やがてキリアンGustav Killian(1860-1921)によって,気管支に直接,管を通して観察する気管支鏡が考案された。日本へは1934年小野譲(1898-1988)がアメリカからジャクソン型直達鏡を紹介,それが改良されて普及するようになった。このようななかで日本気管食道科学会が設立され,1952年には医療法の一部改正により法定診療科目として認められるようになった。当初は,気管・食道の異物除去術を主として発達したが,近年では,耳鼻咽喉科医のみならず,広く胸頸部を専門とする内科医,外科医,麻酔医がその学問の発展に寄与し,医学領域内での境界領域の一つとして,臨床,基礎医学両面にわたりその守備範囲は拡大しつつある。
執筆者:吉岡 博英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報