日本大百科全書(ニッポニカ) 「水上消防」の意味・わかりやすい解説
水上消防
すいじょうしょうぼう
水上の災害を対象とした消防活動をいう。主要な業務内容は次のとおりである。(1)消防組織法および消防法、船舶安全法または海上保安庁の協定などに定める事務、(2)船舶火災予防査察・指導、(3)船舶および沿岸建物の消火活動、(4)沿岸への延焼防止と陸上消防隊の援助、(5)転落者、溺者(できしゃ)の人命救助、(6)転覆・浸水船舶の救護、排水作業など、(7)液体危険物など流出油の処理・排除、(8)船舶火災などの原因および損害の調査、(9)その他。
日本で水上での消防業務が開始されたのは1936年(昭和11)2月で、東京港の海上事故に備えるため、東京市連合防護団から消防艇1艇(愛称「みやこどり」)が京橋消防署築地(つきじ)出張所に寄贈されたのが始まりである。その後、水運の繁忙と船舶の増加につれて、新たに消防艇1艇とその要員の増加によって「水上出張所」が設けられ、1942年10月には水上消防署として独立昇格、「東京水上消防署」が設置された。第二次世界大戦後の1948年(昭和23)3月に東京消防庁が発足し、一時期、消防出張所として組織が分散されたが、翌年にはふたたび水上消防署として独立し、1969年に臨港消防署と改称した。東京港の水上消防の任務は東京消防庁の臨港・高輪・日本橋消防署が行っており、2011年(平成23)時点で消防艇9艇が配置されている。他の都市においては、貿易港、漁港などを主に、消防艇が配置され、2011年4月時点では総計55艇となっている。
[東京消防庁・窪田和弘]
『消防庁編『消防白書』各年版(ぎょうせい)』