改訂新版 世界大百科事典 「水産統計」の意味・わかりやすい解説
水産統計 (すいさんとうけい)
漁業(養殖業を含む)および水産加工業に関する統計の総称。統計調査の体系が整備されたのは第2次大戦後で,調査機構として農林水産省直轄の統計情報組織(統計情報事務所および同出張所)がある。農水省の行っている主要統計とその内容は次のとおりである。(1)水産業の基本構造に関する統計 国,都道府県,市町村等における水産行政の企画,立案,実施の基礎資料となる統計である。〈漁業センサス〉の名称で1949年以来ほぼ5年に1回実施されている(1958年のみ沿岸漁業臨時調査)。おもな統計項目は,漁業経営体数,漁船隻数,漁業世帯数,漁業就業者数等であるが,そのほかに漁港,魚市場,水産加工場,冷蔵庫,造船所,漁村の生活環境等の統計もあわせ作成している。また,漁業センサスを実施しない年次においても漁業経営体数,漁業就業者数の統計は作成されている。(2)漁業生産に関する統計 漁業振興対策,資源研究等の基礎資料となるもので,海面および内水面における漁業生産の実態を明らかにする統計である。〈海面漁業生産統計調査〉〈内水面漁業生産統計調査〉等が行われ,漁業種類別の操業隻数・出漁日数・漁獲量,魚種別漁獲量,水域別漁獲量等が調査され,結果は《漁業養殖業生産統計年報》として発表される。(3)漁業経済に関する統計 漁業経営対策,漁村の生活改善等の基礎資料となるもので,漁家および漁業企業体の経済活動の実態を明らかにする統計である。〈漁業経済調査〉として行われ,《漁業経済調査報告》の形で発表される。おもな統計項目は,漁業収支,漁業以外の収支,漁家の家計費等である。(4)水産物流通に関する統計 水産物の流通改善対策,物価対策等の基礎資料となるもので,生産から消費にいたるまでの流通の実態を明らかにする統計である。おもな統計項目は,主要漁港における魚種別水揚量・価格,主要消費地市場への入荷量・価格,冷蔵庫への入庫量・在庫量,水産加工品の生産量,流通段階別の価格・流通マージン等である。〈産地水産物流通調査〉〈水産加工統計調査〉等として行われ,《水産物流通統計年報》が刊行されている。以上の統計のほかに有用な統計を列挙すると,水産庁の業務統計として漁船統計(登録漁船),漁船保険統計,水産業協同組合統計,総理府の家計調査による水産物消費統計等があり,加工計算による統計としては漁業粗生産金額,生産漁業所得,漁業生産指数および水産物需給統計(食料需給表)がある。
なお世界の統計は,FAO(国連食糧農業機関)が年報として公表している。おもな内容は,漁獲量については1947年からで,魚種別,国別,水域別に表示されており,輸出入数量については52年からで,国別に表示されている。
執筆者:五十崎 暢
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報