1958年(昭和33)から1960年にかけて、東京工業大学教授遠山啓(とおやまひらく)、明治大学教授銀林浩(ぎんばやしこう)らを中心として数学教育協議会の人々によって考案された、整数、小数、分数の四則計算の指導体系である。その基本的原理は次のようにまとめられる。(1)おのおのの計算指導において、まず「素過程」とよばれるもっとも単純かつ基本的な型の計算の指導を行う。次に(2)素過程を組み合わせた、一般的で典型的な複合過程の型の計算の指導を行う。ついで(3)特殊な典型的でない「退化型」とよばれる型の計算の指導を行う。(4)各型の計算指導は「一般から特殊へ」という順序で進めていく。
このような水道方式に対しては、易から難への順序になっていない、小数・分数の指導体系は複雑で有効でない、などの批判もある。しかし、水道方式が当時の計算指導の問題点の解決に寄与した面は多々あり、その考え方のいくつかは今日かなり広く実施されるようになってきている。
[中原忠男]
『遠山啓編『算数に強くなる水道方式』(1961・国土社)』
…その後,68年の学習指導要領には集合,関数,確率など現代数学の基礎概念がとり入れられたが,77年の改定ではその一部は〈基礎的・基本的ではない〉として,おもに中学校段階で削除されるにいたった。このように数学教育の現代化は曲折をへてきたが,戦後日本の数学教育界に提起され注目をひいたものに〈水道方式〉と〈量の理論〉がある。前者は,明治以来の〈数え主義〉に反対して量にもとづく数概念を確立することをめざし,暗算ではなく十進構造による筆算を中心とした指導法を体系化したものである。…
…これに対して同じく50年代後半以降,子どもの認識の発達と言語学・数学など教科の基礎にある諸科学の研究成果に依拠して,教育方法の研究がすすめられるようになった。たとえば計算については数学教育協議会(委員長,遠山啓)が複雑な計算過程をもっとも単純な計算過程に分解し,それを結合してもっとも典型的な複合過程をつくり,そこからしだいに典型的ではない複合過程に及ぼしていくという計算指導の方式(〈水道方式〉と呼ぶ)をつくりあげ,子どもと教師に歓迎された。読み書きそろばんは基礎学力であるという一句に安住せず,読み書きそろばんのうち何がもっとも重要な内容であり,それをどう教えるのがよいかについては不断の研究が必要である。…
※「水道方式」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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