一般には,沿岸漁場と遠洋漁場の間の漁場で行われる漁業をさすが,それらの境界は明確なものではない。行政・統計上は10トン以上の動力船による漁業で,遠洋漁業と区分されるもの,および定置網漁業,地引網漁業を除く漁業をさす。そして沖合底引網,大中型巻網,近海まぐろはえなわ,近海かつお一本釣り,さんま棒受網,さけ・ます流し網,いか釣りなどの各漁業がおもなものとなっている。ただし,いか釣りには遠洋漁業と指定されてはいないが,オーストラリア,ニュージーランド,あるいはカナダ沿岸に出漁する実質的には遠洋漁業の性格をもったものも含まれるので統計上の取扱いに注意を要する。
沖合漁業の概念が若干明確さを欠くこともあって,漁業経済統計では経営体の保持総トン数が10~1000トンを中小漁業と区分するが,これがほぼ沖合漁業にあたる。経営体数は全漁業経営体数の5%程度と少ないが,増加の傾向にある。100トン層までは個人経営が多いが,それ以上では会社経営の割合が急速に高まる。漁獲量は昭和30年代まで300万t弱であったが,その後着実に増加して40年代の終りには400万tをこえ,50年代半ばには600万t前後の水準に達した。これはスケトウダラの増加,それに続くサバ,マイワシの増加によるものである。とくに近年のマイワシの増加は,遠洋漁業の漁獲量の減少を完全に補っている。その後90年代になって激減し,95年には300万t台になった。
沖合漁業の漁獲物は多獲性大衆魚と呼ばれるものが多く,生鮮で消費される割合が少なく,練製品,缶詰,あるいは餌・飼料とされることが多い。このため漁獲物の平均単価は沿岸・遠洋漁業の漁獲物より低い。そのため漁獲量が伸びた割には水揚金額は伸びていない。スケトウダラを別として,沖合漁業の対象種として重要なものは表層回遊性のイワシ類,アジ類,サバ,サンマ,スルメイカなどである。こういった種類は海況によって漁獲量に変動がある。昭和10年前後(1930-42)はイワシ類繁栄時代で,1936年にはマイワシを中心としたイワシ類の漁獲量が160万tをこえた。第2次大戦後は,昭和30年前後のサンマ時代(年間最高50万~60万t),昭和30年代後半のマアジ時代(1960年に最高60万t)を経て,昭和40年からはマサバ繁栄時代になり年々の漁獲量が100万tをこえた。さらに,減っていたマイワシが昭和50年代に入って急速に資源を増大させ,1981年にはイワシ類として史上はじめて漁獲量が300万tをこえたが,95年には100万tを割った。沖合漁業の今後の課題は,こういった多獲魚をどのように有効に利用していくかということであろう。
→水産業
執筆者:清水 誠
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10トン以上の中型漁船によって200海里排他的経済水域内の日本近海で行われる漁業。沿岸漁業および遠洋漁業に対応した名称で、近海漁業ともいう。おもな漁業は、沖合底引網(底曳網)、大中型巻網(旋(まき)網)、サンマ棒受(ぼううけ)網、サケ・マス流し網、イカ釣りなどで、イワシ、アジ、サバ、サンマ、スケトウダラ、カレイ類、イカ類などの多獲性魚貝類を対象とするが、漁獲量は海況や漁況に関係するので、年度によって変動が大きい。2008年度(平成20)の生産量は258万トンであり、1999年(平成11)と比較すると92.2%に減少していた。これらの多獲性魚貝類には大衆魚と称される種が多く、価格も比較的安い。そのため人間の食生活上、重要な動物タンパク源であるばかりでなく、飼育動物の飼餌(じ)料や農林園芸の肥料としても重要である。
[吉原喜好]
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(榎彰徳 近畿大学農学部准教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…戦争による荒廃から生産量がほぼ戦前水準に復したのは51年(戦前を上回ったのは1952)であるが,同年の462万7000tから75年の1054万5000tまで,前述の戦前の例と同じ24年間に2.3倍に急増した。沖合遠洋漁業,特に沖合漁業の比重がぐっと高まり,沿岸漁業の比重が大きく低下した。また経済の高度成長に支えられて水産物需要が拡大し,国内生産の増加にもかかわらず,かつての水産物輸出国から71年には輸入国に転落,いまでは世界一の輸入国である。…
…雇用も,ほぼ年間雇用が確立している。(2)沖合漁業では,分業の程度が低く,年間雇用が多くなったとはいえ,まだ漁期間雇用がかなりの部分を占めている。(3)沿岸漁業を営む漁家労働は,農業労働と同じような性格をもつ養殖労働と,小型漁船を使用する労働とがあり,どちらも家族労働力によって行われている。…
…また,養殖生産の比重は,日本のように盛んな国でも数量で9%,金額で19%である。なお日本の漁業種類別生産高をみると,1973年以降遠洋漁業が激減し,沖合漁業が伸びている(図)。海面漁業の主要な生産水域は北半球であり,太平洋および大西洋の北部水域の生産量は世界総量の49%に達する。…
※「沖合漁業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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