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流し漉き ナガシズキ

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デジタル大辞泉の解説

ながし‐ずき【流し×漉き】

手漉き和紙の漉き方の一。ねりとよぶ植物性粘液を混ぜた紙料液を、ばね式につるしてある漉き桁(げた)の中へ手前からすくい入れ、揺り動かして繊維の絡みをよくし、向こう側へ余分な水を流し、これを数回繰り返す。漉き上がった湿紙を重ねても、ねりの粘度が急速に減退するので、1枚ずつはがせる。→溜(た)め漉き

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大辞林 第三版の解説

ながしずき【流し漉き】

和紙の手漉き法の一。植物性粘液を添加した紙料液を漉き簀に入れ全体を揺り動かして均質な紙層を作る。このあと数回液を汲み上げて同じ操作を繰り返し、紙層が求める厚さになったとき、余分の水といっしょに不純物を流し出す。平安初期に確立した日本独自の手法。 → 溜め漉き

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

流し漉き
ながしずき

和紙の基本的な手漉き方法の一つで、日本独特のもの。溜(た)め漉きに対する。奈良時代末期から平安時代初期(8世紀前後)にかけて一般化された。この方法は植物性粘液の物性を巧みに利用したもので、熟練した手さばきによって長い靭皮(じんぴ)繊維を均一に絡ませ、少量の材料で、合理的にしかも薄くてじょうぶな紙を抄造することができる。前処理工程を経て調製された紙料繊維を漉槽(すきぶね)の中で水とよくかき混ぜるまでは溜め漉きと同様であるが、その段階で、まえもって用意した植物性粘液(ねり)を添加し、十分に混和する。ねりは普通トロロアオイの根、あるいはノリウツギの内皮を砕いて水で抽出する。
 漉き方はまず、簀(す)を張った漉桁(すきげた)で手元のほうから紙料液を汲(く)み込み、すばやく簀の表面全体に液を行き渡らせ、繊維の薄い膜をつくる。この操作は紙の表面となる部分で、地方によっては初水(うぶみず)、化粧水(けしょうみず)、数子(かずし)などとよばれる。次に、ふたたびこの上へ紙料液を汲み上げて、漉桁を前後、ときには左右に揺り動かすと、簀の上を流動する繊維は粘液が漉(こ)されるまでの間に均整して絡み合う。この操作を調子(ちょうし)といい、数回液を汲み上げてはこれを繰り返すことにより紙の厚さが調節できる。簀の上の紙層が求める程度の厚さに達したとき、桁を前方に傾けて余分の液を押し流すが、この操作を捨水(すてみず)といい、これによって浮いている塵(ちり)や不規則な繊維の塊などの不純物が除かれる。漉き上げた湿紙(しっし)は溜め漉きの場合のように間に紗(しゃ)を入れる必要がなく、圧搾して水を切ったあとは、一枚ずつ紙床(しと)からはがして乾燥工程に移すことができる。
 植物粘液の利用という着想は、おそらく昔、斐紙(ひし)を漉く際に繊維の粘性から気づいたと思われる。事実、斐紙の主原料であったガンピ(雁皮)はヘミセルロースの含有量が多く、その化学構造はトロロアオイやノリウツギの粘質物と類似し、同様の物性を示す。紙料液に「ねり」を添加すると、この水溶性高分子は特有の粘滑性と吸着性によって繊維(セルロース分子)にまつわりつき、全体を大きな水和層に包んで凝集を妨げ、よく分散させ、繊維層のすきまを狭くし、簀からの水漏れを遅くする。そして揺り動かしの間にさらに繊維はよく絡み合う。最近は合成水溶性高分子としてポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシドなどもねりとして使用されている。
 また和紙特有の美しさとじょうぶさが流し漉き法によっていることから、「ながしずき」や「ねり」ということばはそのまま国際的に通用している。[町田誠之]

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