日本大百科全書(ニッポニカ) 「流域雨量指数」の意味・わかりやすい解説
流域雨量指数
りゅういきうりょうしすう
河川の上流域に降った雨により、どれだけ下流の対象地点の洪水危険度が高まるかを把握するための指標。気象庁では、全国の約2万河川を対象に、河川流域を1キロメートル四方の格子に分け、降った雨水が地表面や地中を通って時間をかけて河川に流れ出す量を、都市域と非都市域に分けておのおののタンクモデルとよばれる手法で計算している。この河川に流れ出た雨水が河川に沿って流れ下る量を、国土数値情報の河川流路、地質、傾斜、土地利用なども使用して、運動方程式や連続方程式を使って計算し、河川が合流している場合は、各河川の流下量を合算して、対象地点での流下量を求めている。そして、この流下量の平方根を流域雨量指数とし、洪水警報や洪水注意報の発表基準として用いている。
洪水警報や洪水注意報の基準には、流域雨量指数単独の基準と、流域雨量指数と表面雨量指数とを組み合わせた基準がある。気象庁の警報や注意報の発表基準は、原則として市町村ごと(東京都は区ごと)に設定されており、絶えず各種データを加えて見直しが行われている。たとえば、東京都千代田区では(2019年5月29日時点)、洪水警報の発表基準は、日本橋川流域の流域雨量指数11.6以上と、神田川流域の表面雨量指数が11以上のときに流域雨量指数が27.1以上である。また、洪水注意報の発表基準は、神田川流域において流域雨量指数が23.6以上または、表面雨量指数が11以上のときに流域雨量指数が18.9以上、あるいは、日本橋川流域において流域雨量指数が9.2以上または、表面雨量指数が7以上のときに流域雨量指数が9.2以上である。
[饒村 曜 2020年3月18日]