流漉(読み)ながしずき

精選版 日本国語大辞典 「流漉」の意味・読み・例文・類語

ながし‐ずき【流漉】

  1. 〘 名詞 〙 紙を手で漉(す)くときの方法一つ。主に和紙抄造に用いられる。紙料液をすくい上げ全体を揺り動かすうちに、紙料の一部簀子(または漉網)に付着し、所定厚みに達したら全体を傾け余分の紙料液をもとの桶に流してもどすもの。

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百科事典マイペディア 「流漉」の意味・わかりやすい解説

流漉【ながしずき】

和紙の手すき法の一種。紙料液を槽(おけ)から適量すき具にくみ上げ,これを揺り動かして水を切り,簀の子(すのこ)またはこし網上に沈降した紙料の層が所要の厚さになれば,残余の紙料液を槽に戻す(捨て水という)。捨て水によって紙料液中の異物を浮遊させて除くことができる。流漉では紙料液中にねりを加え,すき上げた湿紙は,じかに多数積み重ね,圧搾脱水する。典具帖半紙,京花紙など薄い和紙は,一般にこの方法ですく。溜漉(ためずき)の対。
→関連項目紙漉

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世界大百科事典(旧版)内の流漉の言及

【紙】より

…以上の方法は現在の和紙の製法に類似している。和紙を造るには古く〈溜漉(ためすき)〉があり,後に〈流漉(ながしすき)〉が行われ,現在に至っている。《天工開物》に黄蜀葵を使用すること,さらにでき上がった紙を裂くと木綿紙のようだという記載があることからみて,おそらく〈流漉〉の手法によったものであろう。…

【雁皮紙】より

…ガンピを原料とする紙で,楮紙(こうぞがみ)とともに和紙を代表する。数量では楮紙より劣るが,光沢のある紙で虫害が少なく,長い保存力をもつ点から高い評価を受け,料紙など高級紙に活用されてきた。ガンピはジンチョウゲ科に属し,その繊維はおよそ2.5~5mm程度でコウゾより短いがミツマタよりは長く,細く半透明で光沢に富み,緻密(ちみつ)でねばりのある性質がそのまま紙に現れている。ガンピにはキガンピ,サクラガンピなど種類が多いが,いずれも栽培が困難なので野生のものを採集している。…

【ノリ(海苔)】より

…現在のような干しノリが生産され始めた時期については江戸初期とする説が多いが,実際ははるかに古いことかも知れない。それは干しノリの製法が和紙の流漉(ながしずき)と同じであり,和紙のそれは奈良時代すでに行われていたからである。建治3年(1277)7月2日付の《南条殿御返事》と呼ばれる日蓮の書状に,〈河のり五でふ(帖)送り給ひ畢ぬ〉とあるのを見ても,それは明らかである。…

※「流漉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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