切り(読み)キリ

デジタル大辞泉 「切り」の意味・読み・例文・類語

きり【切り/限り】

[名]
区切り。切れ目。「―のよいところでやめる」「―をつける」
(多く「きりがない」「きりのない」などの形で用いる)かぎり。はて。際限。「欲をいえば―がない」
(限り)商品の先物取引で、受け渡しの期限。限月げんげつ。「先―さきぎり
芸能で、最後の部分。
㋐謡曲で、1曲の最後の部分。
浄瑠璃歌舞伎で、一段・一幕の最後の部分。「四の―」
寄席よせで、その日の最後の出し物。また、その演者。
㋓「切能きりのう」の略。
㋔「切狂言きりきょうげん」の略。
碁で、相手の石の接続を切断すること。また、そのような手。
[接尾]助数詞。やや厚めに切ったものを数えるのに用いる。
「干し瓜三―ばかり食ひ切りて」〈宇治拾遺・七〉
[類語]果て果てし限り際限

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精選版 日本国語大辞典 「切り」の意味・読み・例文・類語

きり【切・限】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「きる(切)」の連用形の名詞化 ) 切ること。断つこと。限ること。また、そのもの。
    1. 段落をつけること。ひとくぎり。きれめ。段落。
      1. [初出の実例]「つとめのよねは長客の、ひときり半や二きりは、ものの見事にゆるりっと、床の済むまで舞ふて居る」(出典:浄瑠璃・松風村雨束帯鑑(1707頃)四)
    2. 限られた一定の空間。都市の町などと同じ単位の居住空間。
      1. [初出の実例]「殿原も全人衆も、双方切限に、一切々々の水兵、一艘々々に取乗り取乗り、その戦い〈略〉会稽を雪訖」(出典:本福寺跡書(1560頃))
    3. ( 「きりが無い」の形で用いることが多い ) 限度。際限。かぎり。はて。
      1. [初出の実例]「三皇は上代の伏羲神農黄帝なり。皇は大の心ぞ。どこをきりともなくゆうゆうとある心ぞ」(出典:玉塵抄(1563)五)
    4. 契約の期限。
      1. (イ) 貸借関係などの取引の受け渡し期限。
        1. [初出の実例]「ながされ人のまた物おもひ しちにをく男をきりにうけもせで〈時之〉」(出典:俳諧・鷹筑波(1638)二)
      2. (ロ) 年季の期限。
        1. [初出の実例]「其方(そなた)の年季も此六月が切(キリ)」(出典:人情本・英対暖語(1838)初)
    5. 演劇、芸能などで、最後に上演される幕、段、席。
      1. (イ) 舞などの最後の一節。
        1. [初出の実例]「光時颯踏急声二反を舞、行則一反を舞。第二の切絶たり」(出典:古今著聞集(1254)六)
      2. (ロ) 能楽で、各曲の終末の部分。特に、その中の七五調の文章で、拍子に合う謡(うたい)だけをさす場合が多い。また、一日の演能番組の最後の一番。
        1. [初出の実例]「於当社能在之。金春沙汰之〈略〉しやうしやうきりにて終了」(出典:多聞院日記‐天正一六年(1588)二月一三日)
      3. (ハ) 歌舞伎、浄瑠璃で、各段あるいは各作品の最後の場、幕。また、一日の上演中、最後の番組にした狂言。大切(おおぎり)切狂言(きりきょうげん)
        1. [初出の実例]「初段から切迄、かたりぬかせにゃ堪忍せぬと」(出典:浄瑠璃・心中二枚絵草紙(1706頃)上)
      4. (ニ) 寄席(よせ)で、その日の最後の一席。
        1. [初出の実例]「夜るは並木亭で一寸中入前をつとめましてすぐに東橋亭の切(キリ)をはなして」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)
      5. (ホ) 宴席などが終わりになる頃合。
        1. [初出の実例]「ややすぎてもふ切りとみへて、いたこひき出し」(出典:洒落本・契国策(1776)南方)
    6. 短い時間を限ってする売色。また、そういうことをする下等な遊女屋。切見世(きりみせ)。また、その遊女。
      1. [初出の実例]「もう山川は見へさうなもの。ただしきりにしけたかしらぬ」(出典:黄表紙・高漫斉行脚日記(1776)中)
    7. 年季を切って奉公する中年以上の下婢(かひ)。きりかか。きりばば。
      1. [初出の実例]「八十に近きまかなひのきりが引手もみつわぐむ」(出典:浄瑠璃・田村将軍初観音(1714)上)
    8. 冷麦をいう女房詞
      1. [初出の実例]「ひやむぎは きりと」(出典:婦人養草(1689)食類の事)
    9. 切炬燵(きりごたつ)をいう女房詞。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    10. 刀の異称。
      1. [初出の実例]「熊野詣の時、かたなをきりとなづく」(出典:名語記(1275)六)
    11. 歌詞の曲節。曲。
    12. きりあげ(切上)」の略。
    13. カルタ、トランプ遊びなどの切り札
      1. [初出の実例]「切のなひかるたに虫持た心地して」(出典:浮世草子・世間娘容気(1717)三)
    14. 碁で、相手の石がつながるのを切断すること。また、そういう手。
      1. [初出の実例]「だって此切断(キリ)は全く私の見落ですもの」(出典:二老人(1908)〈国木田独歩〉上)
    15. にきり(煮切)」の略。
      1. [初出の実例]「『煮切り』と云ふのは〈略〉商売人は略して単にキリと云って居る」(出典:すし通(1930)〈永瀬牙之輔〉二八)
  2. [ 2 ] 〘 副詞助 〙 ( 「限る」意の名詞から転じたもの。「ぎり」とも。また、促音が入って「っきり」となる場合も多い ) 体言またはそれに準ずる語に付いて、それに限る意を表わす。
    1. 「…かぎり」「…だけ」の意。
      1. [初出の実例]「てるてのために、ひけやとて、いんぐゎのくるまに、すがりつき、五ちゃうきりこそ、ひかれける」(出典:説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)一一)
      2. 「風がこれっきりで静まればよいが」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉八)
    2. まるまる…ごと全部の意を表わす。
      1. [初出の実例]「傾城を根太っ切り買ふ材木屋」(出典:雑俳・柳多留‐四六(1808))
    3. ( 下に打消の語を伴って ) 「…しか」の意。
      1. [初出の実例]「其災害は実に想像以外と云ふきりない」(出典:東京灰燼記(1923)〈大曲駒村〉一七)
  3. [ 3 ] 〘 接尾語 〙
    1. やや厚めに切ったものを数えるのに用いる。切れ。
      1. [初出の実例]「干瓜(ほしうり)三きりばかり食ひ切りて」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)七)
    2. 年季などの年数を数えるのに用いる。
      1. [初出の実例]「江津へでいしにやっておきやしたが、あすかア四切(よキリ)の二〆じゃアくわへていても、おさまりゃせん」(出典:洒落本・やまあらし(1808)二)
    3. 「限度とする」「境目とする」の意を表わす。
      1. [初出の実例]「この太刀をぬかれければ、四方五段ぎりの虫も、翼もきれおちにければ」(出典:曾我物語(南北朝頃)八)
    4. ( 「ぎり」「っきり」とも ) 動詞の連用形に付いて、その動作を最大限する意を表わす。…かぎり。
      1. [初出の実例]「此酒の有切(ありギリ)にあそぶなれば」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)二)
    5. ( 「っきり」となることが多い ) 動詞の連用形に付いて、その動作を長く継続する意を表わす。ずっと…する。
      1. [初出の実例]「角屋の丸ぼやの瓦斯(ガス)燈の下を睨めっきりである」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉一一)
    6. ( 「っきり」となることが多い ) 動詞などの終止形に付く。
      1. (イ) 単にその動作だけが行なわれることを表わす。…だけ。
        1. [初出の実例]「遣(や)って試るです、といふっきりで、取付島も何もない」(出典:化銀杏(1896)〈泉鏡花〉六)
      2. (ロ) ( 「…たっきり」の形で ) その状態が継続することを表わす。…したまま。
        1. [初出の実例]「其処の主人が肺病で寝たっ切りだったので」(出典:死者生者(1916)〈正宗白鳥〉七)

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