流通政策(読み)りゅうつうせいさく

改訂新版 世界大百科事典 「流通政策」の意味・わかりやすい解説

流通政策 (りゅうつうせいさく)

流通政策とは,一般に,流通の望ましい状態ないしは目的を達成するための方針を決定し,その方針にそってなんらかの活動を展開することを指す。こうした流通政策は,大きくは,国や地方公共団体などが政策主体となる公共的なものと,個別企業の戦略方針として展開される私的なものとに分けられる。

 まず,公共的な流通政策は,公権力の主体が,流通活動を展開しているさまざまな機関とその活動に対してなんらかの働きかけないしは干渉をすることによって,公的な目的を実現しようとするものである。この場合の流通政策の範囲は,商品が生産者から消費者に移転する過程のすべてを含むものであるが,実際の個々の具体的政策展開は,こうした流通過程の一部を対象とすることが多い。たとえば,大規模小売店舗法(1973)は,流通過程のなかでも,大型店と中小商店との競争秩序の整備という点に焦点を当てたものであった。もとより,流通過程という複雑な機構に公権力が介在しようとするとき,一度に全体を対象とした政策展開を実施することは困難である。したがって政策展開は,個々の積上げにならざるをえない,という性格を有している。しかしながら,全体を見通す体系的な上位政策を設定して,そのもとに個々の下位政策の展開を位置づけることも可能である。日本では,このような上位政策としては,1969年に開始された流通システム化行政を挙げることができよう。この流通システム化行政は,それまでの流通政策が,小売業者や卸売業者を主体とする商業部門を対象としたいわゆる商業政策であり,なかでも中小商業の保護を目的としたものであったのに対し,生産者の流通活動や運輸業者の活動などもその視野の中に組み込み,流通全体の効率化を目指すものであった。こうした流通政策の展開は,流通革命論の台頭と理論研究分野における流通論による商業学の再編成という潮流とも結びついていた点が注目されよう。

 次に,私的な流通政策は,一般に企業のマーケティング戦略一環として位置づけられるものであり,いかなる流通業者を選定するか,そこにおける流通活動をどのように助成していくか,また自社の流通活動をどのように効率化すべきか,などといった決定を行い,その実施を推進していくものである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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