正式には「大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律」といい、小売業の近代化を図るため、大型小売店と中小小売店との利害調整を目的として、1973年(昭和48)に制定され、翌74年に施行された法律。「大店法」とも略称される。2000年(平成12)の「大規模小売店舗立地法」(大店立地法)の施行に伴い廃止された。
1956年に制定された百貨店法が、その後のスーパー等の進出や消費者行動の変化といった経済環境に十分に対応できなくなったため、百貨店法を廃止し、大規模小売店舗法がこれにかわるものとして制定された。大規模小売店舗法は、消費者利益の保護にも配慮しつつ、スーパー等の疑似百貨店をも規制するべく、規制対象を企業主義から建物主義に変え、規制内容を許可制から届出制に変えた点などが、百貨店法との違いであった。大規模小売店の新規出店にあたって、事前の届出により、各地区の商工会議所または商工会が組織する商業活動調整協議会(商調協)および大規模小売店舗審議会の意見に基づき、当時の通産大臣は、店舗面積、開店日、休業日数、閉店時刻の各事項につき、必要に応じ勧告や命令によって調整できることが定められた。同法の調整制度の下でも、スーパー等の出店をめぐる利害紛争が各地で多発、激化したため、78年、同法の改正が行われた。この改正では、大型小売店の新増設は、行政指導面での事前説明の義務づけ・届出自粛、地方自治体の独自規制等により、規制が強化されて出店調整も長期化する傾向にあったが、89年(平成1)からの日米構造問題協議を受け、段階的な規制緩和措置が講じられた。第1段階の運用適正化措置を経て、第2段階として、91年に大店法が改正された(翌92年1月から実施)。同改正法は、通商産業大臣が調整を行う第1種大規模小売店舗と、都道府県知事が調整を行う第2種大規模小売店舗との種別境界面積を従来の2倍に引き上げ、第1種大規模小売店舗は店舗面積3000平方メートル以上(政令指定都市等では6000平方メートル以上)とするとともに、大規模小売店舗審議会等の意見聴取対象の拡大、地方公共団体の独自規制の適正化等を定めた。
この改正にあわせて、出店調整処理期間を最長1年とし、出店調整処理期間の起算日を建物設置者から同法第3条届出のあった日とし、出店表明・事前説明および特定市町村の制度を廃止し、第3条届出の後に最長4か月の地元説明を行うこととし、商業活動調整協議会(商調協)を廃止して出店調整機能を大規模小売店舗審議会に移管・一元化すること等、規制緩和の制度改革が実施された。また、わが国への輸入拡大の要請を踏まえ、大店法の特例措置として、「輸入品専門売場の設置に関する大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律の特例に関する法律」(輸入品専門売場特例法)が制定された。
大店法改正と関連して、地元中小小売店を中心とする商店街の整備、大型店と中小店との共存共栄を図る高度商業集積(ハイ・アメニティー・マート)の整備、およびそれらと周辺公共施設との一体的整備を図るために、「特定商業集積の整備の促進に関する特別措置法」(特定商業集積整備法)が制定され、また「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法」(民活法)および「中小小売商業振興法」の一部改正が行われた。
1994年5月からは改正大店法の運用基準が緩和され、店舗面積1000平方メートル未満の出店が原則自由化されるとともに、届出が不要な閉店時刻の19時から20時への延長、年間休日数の上限の44日から24日への引下げが認められた。さらに、95年3月に策定された規制緩和推進計画に基づき、改正大店法を再度見直す方針が打ち出された。これを受けて政府は、大店法にかわって、周辺環境など社会的側面から大型店を規制する「大規模小売店舗立地法」を98年に制定した。大店立地法の施行(2000年6月)に伴って大店法は廃止された。
[福原紀彦]
正称は〈大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律〉。大店法とも略称する。1956年に制定された百貨店法に代わって73年に制定され,翌74年から施行された。この法律が制定されるに至った背景としては,スーパーマーケットなど百貨店以外の大規模小売業が急成長し,これらが中小小売業に重大な影響を与えるようになってきたばかりではなく,百貨店との間に法規制上の不公平という問題が生じてきたこと,社会の発展と消費者の購買行動の変化にともない,小売事業の調整基準にも変化が求められるようになってきたことなどがあげられる。
この法律のおもな特徴は次のとおりである。(1)百貨店法における企業単位の規制に代わって,建物単位の規制が採用され,従来規制を免れていた疑似百貨店など大型スーパーマーケットや月賦百貨店のほか,寄合百貨店,地下街なども規制の対象とする。(2)百貨店法の許可制に代わって,開店については事前届出制を採用し,原則自由ではあるが,それぞれの地区の商工会議所(または商工会)が組織する商業活動調整協議会(略称,商調協),および大規模小売店舗審議会の意見に基づき,必要に応じて通産大臣が店舗面積や閉店時刻,休業日数等について調整する。(3)中小小売業との事業活動の調整のみならず,流通近代化,消費者利益の確保の視点をとり入れ,法文上に明記している。
しかしながら,この法律は,運用基準にあいまいな点があったばかりでなく,1973年秋の石油危機後の経済の低成長のもとで,大手スーパーマーケットと中小小売業との紛争が全国で多発したため,78年に改正大規模小売店舗法が制定され,翌79年から施行された。改正された要点は次のとおりである。(1)規制の対象となる店舗面積基準を1500m2(政令指定都市では3000m2)から,500m2に引き下げ,中規模店も規制の対象にした。(2)都道府県知事にも調整の権限を与え,500~1500m2の中規模店の調整をゆだねた。(3)地元の中小小売業に著しい影響があると判断される場合は,店舗面積の削減のみならず,事実上出店中止を勧告,命令できるよう規制を強化した。(4)審議期間に若干余裕をもたせるよう配慮する一方,終りなき審議の弊害をなくすため,一定の期間内に意見をとりまとめるよう義務づけた。
その後,数次にわたる改正(1983年,91年,93年)をへて規制緩和がすすみ,91年改正では地元の商調協での審議は廃止されて大規模小売店舗審議会の審査のみとなり,また大型店の面積の引上げなども行われた。さらに94年には省令などにより運用の緩和がすすみ,1000m2未満の新増設は原則自由,開店時刻や年間休業日数の大幅緩和などが施行されている。
執筆者:木綿 良行
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…しかし,スーパーマーケットが巨大化し百貨店に優に対抗しうるビッグ・ストアと呼ばれるほどの発展を示したため,百貨店のみならず各地の一般独立小売商との間の対立が激化した。そのため,これまで特別の規制のなかったスーパーマーケットに対して百貨店法のような法的規制が必要であるということになり,73年には百貨店法が廃止されるとともに,百貨店とスーパーマーケットを含めた一定規模を超える大型店を大規模小売店舗と規定し,その出店,売場面積,営業時間などを規制するための大規模小売店舗法(大店法)が制定され,かつての百貨店法と同様にスーパーマーケットも政府の規制のもとにおかれることになった。その結果,スーパーマーケットの小売業界における優位は定着したものの,急成長は望めなくなり,大規模な総合スーパー・チェーンどうしの間の競争が激化しながら今日に至っている。…
※「大規模小売店舗法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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