商業政策(読み)しょうぎょうせいさく(英語表記)commercial policy

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

商業政策
しょうぎょうせいさく
commercial policy

国家が公権力に基づき商業に対して行う立法的・行政的措置の総称。商業には広狭の概念があるが、商業政策というときには、狭義の商業である物資流通業を対象にするのが一般的であり、広義の商業に含まれる金融、保険、運輸等については、それぞれ別個の政策によっている。また、物資流通業は、活動範囲によって内国商業と外国商業に分けられるから、商業政策も対内商業政策と対外商業政策に分けることが可能であるが、通常、後者は貿易政策として別扱いとし、商業政策といえば単に対内商業政策のみをさすのが普通である。
 1930年前後にマーケティングが普及するまでの商業政策は、むしろ貿易政策が中心であった。その理由は、国民経済の成立後、貿易が国民経済の存立と発展に重大な影響を及ぼしていた反面、内国商業については自由放任の思想が強かったためである。この段階の商業政策は、円滑な商業活動を図るための各種制度的基盤の整備、自由競争の弊害の除去、および自由競争の確保を目的とするものが中心であった。その主要内容は、取引所制度の充実、商号・商標の使用規制、原産地証明制度、不正競争の取締り、公序良俗・公安・衛生に関係する営業の許・認可制、財政上の理由による専売制などであった。
 マーケティング時代に入ると様相は大きく変化する。アメリカでは1930年代にこの時代に入ったが、日本では1960年代になってからである。商業分業の高度化、大量販売の徹底、戦略を軸にした競争の激化と多様化などの現象が生じ、商業政策は商業活動の秩序化と調整のため、積極的な施策へと重心を移行させる。その一は、大規模商業経営と中小規模商業経営の対立、および大規模商業経営相互間の対立の激化の調整である。このため、各種の規制、保護、助成が必要になってきた。現在の「大規模小売店舗立地法」(略称大店立地法、平成10年法律第91号)および「小売商業調整特別措置法」(略称商調法、昭和34年法律第155号)に至る流れは、この典型である。その二は、多様な販売方法の出現に伴う規制の強化である。再販売価格維持契約制、割賦販売、訪問販売、通信販売、自動販売機による無人販売、マルチ商法などのもたらす、とくに消費者に対する影響の規制がそれである。「特定商取引に関する法律」(略称特定商取引法、昭和51年法律第57号)は、この典型例である。その三は、物価の安定、情報ニューメディアを中心にした技術進歩を結合する電子取引のような新流通システムの開発・促進、新事業創出促進、市街地活性化など、社会経済やIT(情報技術)の進歩への対応であり、これらはむしろ早急に政策を整備すべき課題である。[森本三男]
『篠原一壽著『商業政策論序説』(2008・税務経理協会)』

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