日本大百科全書(ニッポニカ) 「海水準変化」の意味・わかりやすい解説
海水準変化
かいすいじゅんへんか
eustatic change of sea level
平均的な海面の高さが、全地球的な規模で同時に変化する現象。同時とはいっても、このような現象は短時間ではなく、地質学的な時間スケールでおこる。原因は、入れ物としての海の容積の変化と、内容である海水の体積の変化が考えられる。前者には、陸地が侵食され土砂が海底に堆積(たいせき)して海が浅くなるためにおこる堆積性海水準変化と、地殻変動により海底が沈降あるいは隆起しておこる構造運動性海水準変化がある。後者には、気候の変化により、地球上の水が雪や氷河となって地上にたまる割合の変動による氷河性海水準変化がある。もっとも大きく影響するのは氷河性の変化で、地球上の平均気温がa℃降下してb年間継続すると、大ざっぱに見積もって平均海面はa×bミリメートル低下するという(気温上昇時は海面も上昇)。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第三次報告書(2001)によると、いまから約2万年前の最終氷期極大期以降、現在および過去の氷床から十分に離れた場所の海面は、現在より120メートル以上低下していたとされている。また、もっとも急激で全地球的な海面水位の上昇は、1万5000年前から6000年前の間でおこり、その平均的な度合は1年あたり約10ミリメートルであったと報告されている。
[安井 正・佐伯理郎]
『E・サイボルト、W・H・バーガー、新妻信明著『海洋地質学入門』(1986・シュプリンガー・フェアラーク東京)』▽『大原隆・西田孝編『地球環境の変容』(1990・朝倉書店)』▽『小池一之・太田陽子編『変化する日本の海岸――最終間氷期から現在まで』(1996・古今書院)』▽『気候変動に関する政府間パネル編、気象庁・環境省・経済産業省監修『IPCC地球温暖化第三次レポート 気候変化2001』(2002・中央法規出版)』