深井郷(読み)ふかいごう

日本歴史地名大系 「深井郷」の解説

深井郷
ふかいごう

戦国時代、大鳥郡にあった郷で、現在の堺市の深井地区に比定される。文明三年(一四七一)八月日の春日神社社司等言上状(東山御文庫記録)に「泉州国衙内春日社領深井郷御年貢事」とみえる。同状によると、もともと当郷国衙分年貢は奈良春日社が収納して別納すべきところ、室町幕府の奉行人であった式部丞清秀数が数年前、将軍家代官と称して国人と語らい将軍家制札を打ち、そのうえ守護不入の地である春日社社家住宅へ乱入、神木安置の地を汚し、神木・神米など資財を取散らかし、国衙年貢の二重取りなどをした。さらに前年は国内が戦乱に荒れ、また国人らによって惣庄年貢が押領されたため納入すべきものがまったくないと訴えたにもかかわらず、清秀数は深井郷の田所と通じ、国衙年貢未進分の徴収と称する将軍家の御奉書を発して催促するなどの悪行を行った。


深井郷
ふかいごう

和名抄」高山寺本に「不加為」、東急本に「布加井」の訓がある。天平一一年(七三九)備中国大税負死亡人帳(正倉院文書)によると、郷内の岡田里戸主津臣弟嶋の戸口津臣酒見売が九六束の大税を借りて死亡している。「大嘗会和歌集」に、下道郡が後一条天皇のとき主基となったことに関連して、長和五年(一〇一六)一一月二日、善滋朝臣為政が深井郷の地名にちなんで「天が下君に仕うる諸人は深井の里の深き心に」との歌を詠じたとある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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