渦鞭毛植物(読み)うずべんもうしょくぶつ(その他表記)dinoflagellate
Dinophyta

改訂新版 世界大百科事典 「渦鞭毛植物」の意味・わかりやすい解説

渦鞭毛植物 (うずべんもうしょくぶつ)
dinoflagellate
Dinophyta

植物分類系の1門。多くは水界でプランクトン生活をする単細胞性の鞭毛藻で,しばしば赤潮を形成し,魚貝類に被害をもたらす。海にも陸水にも生育し,細胞内にはクロロフィルaとcのほかに赤色のペリジニンと呼ぶカロチノイドを含む色素体をもち,光合成によりデンプンを生成する。体は紅色または紅褐色を呈するものが多く,このため炎色植物Pyrrophytaと呼ばれることもある。学名のdinoは渦を巻くの意で,この藻群の泳ぐようすに由来する。双鞭毛藻植物と呼ばれることがあるが,これは誤訳である。泳ぐ単細胞の体は球形かまたはかぶと形に似たものが多いが,碇(いかり)の形に似たものもある。体は上半部と下半部の区別が明りょうで,境界部分を取り巻く横溝girdleと呼ぶ構造があり,また腹部には短い縦溝がある。横溝と縦溝の交わる部分から2本の鞭毛がのび,その1本は横溝を巻き,他の1本は縦溝に沿って後方にのびて,体を前方へ進める働きをする。この藻群の核は特異的で,大きさはしばしば直径20μm以上にも達し,中間期でも染色体は消失しない。また細菌と似て染色体にはタンパク質のヒストンがない。このことから,渦鞭毛藻類は進化の面では原核生物と真核生物の中間に位置すると考えられている。

 生殖には体が斜めに分裂して2個となる無性生殖と,雌雄の2個の個体または個体内につくられた配偶子が合体する有性生殖が知られている。なお環境が不適になると,シストcystを形成して休眠することが知られる。また渦鞭毛藻類には毒性物質をもつ種類があり,これを餌料とするホタテガイイガイなどの二枚貝を食べたために起こった食中毒の記録がある。なお運動性をもつところから動物にも分類される。
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動物学では渦鞭毛虫類といい,原生動物有毛根足虫亜門鞭毛虫上綱植物性鞭毛虫綱の1目に属する。体の形は碇型,こま型など変化にとみ,大部分の種類は2から多数のセルロース性の被殻でおおわれている。しかし,ギムノジニア属Gymnodiniaは例外で,裸か薄い殻で包まれている。大部分は海産であるが,一部は淡水にすみ,また寄生性のものもある。この類はプランクトン生活をしていて,平常は魚類などの天然飼料として有益であるが,一部の種が異常に発生すると,赤潮の原因になる。マミズツノオビムシCeratium hirundinellaは淡水に大発生して水に臭気や味を生じさせる。海ではヤコウチュウNoctiluca ecintillans,ナガツノオビムシCeratium furca,ユミツノオビムシCeratium fusus,ゴカクウズオビムシPeridinium pentagonium,ススフタヒゲムシExuviaella marinaなどが普通にみられる。ギムノジニウム属GymnodiniumゴニオラクスGonyaulaxなどの種類が赤潮になったときは大きな被害がでる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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