朝日日本歴史人物事典 「湖出市十郎(初代)」の解説
湖出市十郎(初代)
生年:生年不詳
江戸中期の長唄唄方。はじめ初代吉住小三郎の門人で,吉住市十郎と名乗った。延享4(1747)年ごろから江戸森田座に出演するが,のちに初代富士田吉次に入門してから岡田,富士田と改姓した。明和5(1768)年から湖出と名乗るようになり,江戸市村座の専属だった師の富士田吉次に対抗するかのように江戸中村座で活躍し,また初代中村富十郎と共に上った大坂でも高く評価された。特に,明和~天明期(1764~89)に流行していた独吟のメリヤスものを得意とし,現在も残る名曲「黒髪」や「白妙」などを唄って人気を博した。市十郎の名跡は幕末までに3代(一説に4代)を数えた。
(長葉子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報