デジタル大辞泉 「一声」の意味・読み・例文・類語
いっ‐せい【一声】
「汽笛―新橋を」〈大和田建樹・鉄道唱歌〉
2 能の構成部分の一。シテの登場、舞のかかりなどに謡う定型的な短い謡。
3 能の
4 狂言の囃子事の一。能がかりの登場に用いる。
5 歌舞伎囃子の一。能と同じく、大鼓・小鼓・能管による。大海・深山の幕開き、道具替わり、舞踊の主役の登場などに用いる。
能,狂言,歌舞伎音楽の用語。一セイとも書く。(1)能の囃子事(はやしごと)。化身,霊,精などの登場に広く用いられ,笛,小鼓,大鼓で奏演する。大鼓,小鼓は細かな変化のあるリズムを奏するが,笛は鼓のリズムに合わせず所定の部分を自由に奏する。用途が広く,登場する役柄により奏演の速度やテンポにも差があり,位取りにも幅がある。(2)能の謡事(うたいごと)。高音域を主とした七五調の短い楽曲。リズムは地拍子(じびようし)の法則に合わない。弱吟(よわぎん)と強吟(つよぎん)のものがある。詠吟的な文章で,シテの登場直後や舞事(まいごと)の直前,場面転換後の冒頭などに広く用いられる。〈二ノ句〉と呼ばれる第2節をもつのが完備形式と考えられ,登場直後のものに多い。囃子事の一声と密接な関係があるが,つねに結びついているわけではない。(3)狂言の囃子事。神仏,精,鬼,霊,物狂いなどの登場に用いられ,笛,小鼓,大鼓で奏演する。能の一声(1)を簡略化したもので,笛が初めに〈ヒッ〉とだけ吹き,ついで大鼓,小鼓が〈三ツ地〉という手組をくり返す。〈次第〉とほぼ同じ形態だが,ややゆったりと奏される。(4)狂言の謡事。能の一声(2)を模したもので,ほとんど同形式だが,強吟が多いことと,〈二ノ句〉を欠くことなどが異なる。出端事の一声の直後や,〈三段ノ舞〉の直前などに用いられる。(5)歌舞伎音楽。《石橋(しやつきよう)》《橋弁慶》など能に取材した舞踊で用いる出入囃子で,能の囃子の手法を踏襲している。《平家女護島(へいけによごのしま)》(《俊寛》)や《関の扉》などの幕あきにも下座音楽として用いる。深山幽谷,大海など大自然の情景を描写する。
執筆者:松本 雍+長尾 一雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 出端事は種類が多いが,おもに大鼓(おおつづみ)・小鼓(こつづみ)で奏される大小物と,太鼓が加わる太鼓物,その他のものの三つに大きく分けられる。大小物には,老人を除く男女,貴賤,僧俗などさまざまな役に用いる最も使用例の多い〈次第(しだい)〉,《嵐山》《賀茂》《高砂》など脇能のワキ・ワキヅレがさっそうと登場する〈真ノ次第〉,おもに化身,幽霊,精などの役に用いる〈一声(いつせい)〉(〈次第〉と同様に使用例が多い),老人など脇能の前ジテ・ツレが荘重に登場する〈真ノ一声〉,《砧(きぬた)》《熊野(ゆや)》などでいつのまにかシテが登場していたという趣の〈アシライ出〉などがある。 太鼓物には,《海人(あま)》《殺生石》《野守(のもり)》など,神仏,鬼畜,精などの非人間的な役の登場に用いる〈出端〉,《鞍馬天狗》のように天狗や異相の神などが豪壮に登場する〈大(おお)ベシ〉,《猩々》《西王母》など天仙が風流的に登場する〈下リ端(さがりは)〉,《邯鄲》《鶴亀》など唐人の帝王の登場や着座に用いる〈真ノ来序〉などがある。…
※「一声」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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