日本大百科全書(ニッポニカ) 「湿害」の意味・わかりやすい解説
湿害
しつがい
梅雨(つゆ)や秋霖(しゅうりん)の時期に降雨日数が異常に多くなると、湿度が高まり、日照不足が加わって農作物などに被害が出る。これを湿害または湿潤害といい、ときには長雨害(ながあめがい)ということもある。収穫期のムギなどは、収穫前に畑で発芽するという穂発芽を生じて商品価値が落ち、もっとも大きな被害を受ける。またこうした環境下ではムギ、野菜、果樹などに病害が蔓延(まんえん)し、その収量や品質に大きな影響を与える。受精期の果樹などは交配を阻まれる。そのほか金属類の腐食、有機物の腐敗、屋外労働の障害などの誘因となる。1963年(昭和38)と77年はともに湿害の大きな年であった。91年(平成3)は関東地方や東北地方南部を中心に長雨と日照不足が顕著で、湿害が発生した。
[安藤隆夫・饒村 曜]
『小中原実著『カンキツの気象災害――発生のしくみと防ぎ方』(1988・農山漁村文化協会)』